百貨店、存在の証明その2 縮小再生産の三越伊勢丹、実りの時期は遠く

森田俊一(流通ジャーナリスト)
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インバウンド需要も減速、頼みの綱はEC

 大型百貨店の出店が厳しい状況下、三越伊勢丹ホールディングスが描くのは、オムニチャネル化による成長戦略だ。

 基幹店でしか購入できないような商品、あるいは人気商品の販売において、ネットと実店舗を融合させることで顧客との接点を増やす、と同社は説明する。実際に、そうしたデジタル分野への投資もしている。

 EC化への流れは抗えない帰らざる河である。大手百貨店が相次いで不動産事業に舵を切るなか、三越伊勢丹に残された選択肢はEC化しかないという判断と見られる。

 今後は百貨店の有力商品である衣料品のEC化率も、現在の10%台から20~30%へと高まることが予想され、三越伊勢丹としても「早期に売上高の1割」をめざす方針だ。しかし、「ECシフトといっても、果実を手にできるのはまだ先。リストラばかり先行している現状に、社内の徒労感もあるのではないか」とある流通コンサルタントは予想する。

 成長戦略を描く上で、頼みのインバウンドも逆風が強くなっている。同社はインバウンドの伸びが顕著な大阪地区に店舗がないというハンディがあるうえ、19年からの中国EC法の施行に中国人民元安も重なり、免税売上高の今後の伸びは不透明な状況だ。

 まだ実績のないECシフトに踏み切った三越伊勢丹の選択は、これから5年後、10年後に実りを結ぶだろうか。(次回に続く)

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