武器は現場感覚!ローカルスーパーとしての責任を果たす=カスミ 藤田元宏 社長

聞き手:千田 直哉 (編集局 局長)
構成:中村麻里
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震災で消費者の買物行動が変化

──増収増益決算だった12年2月期業績をどのように振り返りますか。

藤田 上期は東日本大震災からの復旧と原子力発電所の事故への対応で苦心しましたが、従業員の頑張りにより“食のライフライン”としての使命を果たすことができたと自負しています。お客さまの買上点数を増やすための施策が奏功したこともあり、増収につながりました。増益となったのは、売上総利益高(粗利益高)が対前期比3%増と何とか確保できたことと、節電や地道な作業改善運動の効果が表れたからです。

──買上点数は伸びているということですが、とくに重要視している客数は減っています。

藤田 東日本大震災後は夜6時以降の夜間のお客さまが減り、逆に開店から昼の12時までの間に来店される方が増えています。つまり、買物行動が夕方・夜間から午前中に若干シフトしています。

 買上点数が伸びているのは来店頻度が減っているからだと考えています。これはガソリンの値上げが影響しています。当社はクルマ利用の店舗がほとんどなので燃料価格高騰の影響を大きく受けます。

──ほかにもお客の買物行動に変化はありましたか。

藤田 はい。とくに下期から大きく変わったと思います。そのポイントを3つ挙げるなら、1つめは先ほど述べた夜間の来店客が減っていること。2つめは購入する商品の量目が適量になっていること。つまり冷蔵庫にストックすることがなくなりました。そして3つめは保存性の高い食品をより多く購入するようになったことです。

 当社ではこうした変化に対応するべく、店内作業の時間を変更したり、必要な量目と価格の品揃えで《値ごろ感にあふれた売場づくり》に努めています。その結果、3月は前年を上回る客数を達成しています。

 13年2月期の予算上の客数は、既存店ベースで対前期比3%増が目標です。業態別、店舗別に1日当たり何人客数を増やすのか、商品部と営業企画部は1カ月当たり何人客数を増やすのか、といった具体的な数値目標を立てて取り組んでいます。

──販売促進施策については、約1000品目あったEDLP(エブリデイ・ロー・プライス)商品の品揃えを見直しているそうですね。今後、EDLPとハイ&ローのどちらに注力するのですか。

藤田 この2月中旬から3月上旬にかけてEDLPの対象商品を見直し、無駄な商品については取りやめています。お客さまからの支持の高い商品の価格を下げており、すでに実績として表れています。

 販売施策については、現時点でハイ&ローの手段としてのチラシ配布を減らそうとは考えていません。EDLPはEDLC(エブリデイ・ロー・コスト)あってのものです。ローコストオペレーションを徹底するとなると、どうしても人件費を減らさなくてはなりません。しかし、ローカルスーパーには地域の雇用責任がありますから、当社は今後もハイ&ローを中心に、われわれが提案したい商品をできるだけ安くお客さまに提供していきます。

足場をしっかりと固めドミナントを強固に

──13年2月期は中期経営計画(10~12年度)の最終年度に当たります。来期を初年度とする新中期経営計画ではどのようなことに取り組みますか。

藤田 新しい組織づくりを行い、組織内のコミュニケーションを改善したうえで何をめざすかを考えたい。

 今の時代は個人が強烈なリーダーシップを発揮して組織をぐいぐいと引っ張っていける環境ではありません。知識や経験、知恵を持った人をどのように意思決定の場に集結できるか。それを企業価値にしようと考えています。

 出店戦略については、当社が展開する3つのフォーマットの特徴づけをしたいと考えています。

 食卓への提案機能を高めた当社のフラッグシップ店舗「フードスクエア」は、延床面積1000坪、売場面積700~750坪で半径3kmを商圏に設定しています。価格帯を広げる一方で、収益力をいかに上げていくかが課題です。

 標準業態の「フードマーケット」は、売場面積600坪前後で半径1kmの商圏をベースにしっかりとした収益を恒常的に上げるべく、来店頻度を追求したいと考えています。

 売場面積300~400坪の価格訴求型店舗「FOOD OFF ストッカー」は、半径500mという小商圏でローコストによるロープライスを実現します。損益分岐点の低い小型店舗として「フードスクエア」と「フードマーケット」の2業態の間を埋めていくようなイメージで出店します。

 12年度は、「フードスクエアカスミ越谷大袋店」(埼玉県:開業4月13日)、「フードスクエアカスミ流山おおたかの森店」(千葉県:同4月20日)、「フードスクエアカスミ春日部武里店」(埼玉県:同4月27日)、「フードマーケットカスミおもちゃの町店(仮称/栃木県:同7月)」、「フードスクエアカスミ越谷東駅前店」(仮称/埼玉県:同9月)、「フードスクエアカスミふじみ野西鶴ケ丘店」(仮称/埼玉県:同11月)の6店舗の出店を予定しています。

 来期以降も年間6~7店舗の出店は継続します。埼玉県や千葉県への出店を強化する一方で、ドミナントエリアである茨城県への出店にも力を入れ、足場をしっかりと固めていきます。

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聞き手

千田 直哉 / 株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア 編集局 局長

東京都生まれ。1992年ダイヤモンド・フリードマン社(現:ダイヤモンド・リテイルメディア)入社。『チェーンストアエイジ』誌編集記者、『ゼネラルマーチャンダイザー』誌副編集長、『ダイヤモンド ホームセンター』誌編集長を経て、2008年、『チェーンストアエイジ』誌編集長就任。2015年、『ダイヤモンド・ドラッグストア』誌編集長(兼任)就任。2016年、編集局局長就任(現任)。現在に至る。
※2015年4月、『チェーンストアエイジ』誌は『ダイヤモンド・チェーンストア』誌に誌名を変更。

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