武器は現場感覚!ローカルスーパーとしての責任を果たす=カスミ 藤田元宏 社長

聞き手:千田 直哉 (編集局 局長)
構成:中村麻里
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──よく臨店をすると聞いています。

藤田 はい。私は売場が大好きです。とくに営業中の売場に立ち、お客さまの買物行動を見ているとあっという間に時間が過ぎてしまいます。そこで見たことと実際の数字とを検証してみると「やっぱりな」ということが多々あります。たとえば「お客さまがあまり立ち寄らないコーナーだな」「うまく商品をアピールできてないな」と感じた売場はうまくいっていないことが多いものなのです。売場で見て感じたことと、実際の数字を照らし合わせて仮説を立てて行動してみる価値はあります。

──そうしたギャップの改善を、具体的にはどのようなかたちで施策に落とし込んでいるのですか。

藤田 当社は全店長に毎月の売上予測を出してもらっています。一方で予算がありますから、予測と予算の差額をどのように埋めるのかを部門ごとに考えるよう指示しています。たとえば、お店で月間90万円の差を埋めるために、どの商品をどう販売して1日3万円を稼ぐのか。商品部はカテゴリー別に予測を立て、週間単位に落とし込んでその差をどう埋めていくのかを毎週確認しています。

──論理的なアプローチですね。

藤田 まだまだです。何よりも、誰にでもわかりやすくしなければならないと考えています。SMはパートタイマーさんの比率が高い業界なので、そこはとくに注意しています。私はこの4年ほどマネジメント改革を担当してきましたが、管理職には販売を担当するに当たって具体的でわかりやすい指示を出すことを徹底させています。これが企業風土として定着するまでには時間がかかりますが、ぜひともやり遂げたい。

「声なき声」を拾うためのSNS研究会

──さて、3月1日付けで「ソーシャルメディアコミュニケーション研究会」を新設しています。これも買物行動の分析・検証と関係しているのですか。

藤田 そうです。いくつか仮説を立てて研究しています。

 1つめはソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)上でお客さま同士が交わされる「声なき声」に真摯に対応したときに、企業風土や売場を変えることができるのではないかということ。

 2つめはSNSの人間的でポジティブでスピーディなやり取りを社内のコミュニケーションツールとして取りこむメリットがあるのではないかということ。

 3つめは、チェーンストアはマーケットのお客さまの最大公約数をターゲットにすることが一般的ですが、高齢化の進展と人口減少の時代にそれだけでは立ち行かなくなるのではないかと考え、一人ひとりのお客さまの行動や声に対して従業員が個店ごとに対応することが大事なのではないかということです。

 この3つの仮説に基づいてSNSを研究しています。

 12年度の方針はお客さまの「不便さ」を徹底的に取り除くことです。実際に来店されるお客さまの意見を聞く体制はすでにありますが、問題は「声なき声」です。それに真摯に対応していかないと客数を伸ばすことはできないと考えています。

──最大公約数以外には、どのような客層を想定していますか。

藤田 小さな子どもがいる30代の家庭や75歳以上の高齢者、クルマを持っていない人、そして買物難民と言われている方々です。

──移動スーパー(移動販売)とネットスーパーもすでにスタートさせています。

藤田 はい。まだまだ黒字化のめどは立ちませんが、授業料を払っているつもりでやっています。移動スーパーは予想以上の反響がありました。今後は収益の上がるビジネスとして磨きあげたい。

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聞き手

千田 直哉 / 株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア 編集局 局長

東京都生まれ。1992年ダイヤモンド・フリードマン社(現:ダイヤモンド・リテイルメディア)入社。『チェーンストアエイジ』誌編集記者、『ゼネラルマーチャンダイザー』誌副編集長、『ダイヤモンド ホームセンター』誌編集長を経て、2008年、『チェーンストアエイジ』誌編集長就任。2015年、『ダイヤモンド・ドラッグストア』誌編集長(兼任)就任。2016年、編集局局長就任(現任)。現在に至る。
※2015年4月、『チェーンストアエイジ』誌は『ダイヤモンド・チェーンストア』誌に誌名を変更。

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