店長主導型の店舗運営をもう一度やり直し、MD改革を成し遂げる=サミット田尻 一 社長

聞き手:千田 直哉 (編集局 局長)
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──どんな風に変わってきているのでしょうか?

田尻 端的に言うと、買物の場でコミュニケーションを求めだしているということです。われわれチェーンストアオペレーションを行っているSMは、セルフサービスを採用していますから、コミュニケーションの部分を排除してきたという経緯があります。ところが今は、売場で商品説明を求められることが増えるなど、お客さまがSMという買物の場に対話を求め始めているなと感じています。

 その証拠に、「マグロの解体実演販売」などのパフォーマンスを行うと、該当商品の売上がものすごく上がります。お客さまは、そういうかたちで、買物時にちょっと背中を押してもらいたがっているのだと思います。これは、明らかに従来とは違う求め方をSMにしているということです。ただ商品を並べて売ればよいというわけではないということが、とくにこの1~2年顕著に出ています。

 そこで、当社では『おさかなキッチンコーナー』を“パフォーマンスする場所”と位置づけることにしました。試行錯誤しましたが、この半年ぐらいでやっとかたちが見えてきました。「マグロの解体実演販売」の場合、これまでと同じ特売価格で販売しているだけなのに、お客さまが二重三重に輪をつくり、われ先にと商品を奪い合っているのです。お客さまは、こうした市場(いちば)的な感覚をSMに求め始めているのかなという気がしますね。

──その傾向はとくに週末に多く見られますか?

田尻 輪をつくっているのは奥さんに連れられて来店した旦那さんで、もの珍しそうに、「うまそうだな」と興味を示しています。そういう意味では、週末のウエートが高くなっているのだと思います。一方、平日は、有職主婦が随分増えているという印象を持っています。

 とはいえ、わが社のポイントカードでデータを調べてみると、来店頻度は落ちてはいないし、カード会員の買上金額も、実はさほど減ってはいません。当社のカードホルダーは72~73%ですから、残り27~28%の人たちが浮動層で、こうした人たちの買上額や来店頻度が減っているということです。その浮動層をどう取り込むかは考えどころです。

──カード会員への待遇を厚くすると浮動層のほうは逃げるでしょうし、逆もまたしかりでしょうから、双方を上手に取り込む施策となると難しいですね。

田尻 すべての来店客にサービスを提供する目的で、『現金ご返金セール』を2月から13店舗で実験しています。これは、ポイントカードがなかった時代、他社に先駆けて当社が行っていたセールで、買物当日にレシートを精算所に持っていくと1割の現金をお返しするというものです。あと2~3回実験をしますが、このセールのほうが高い効果が得られるのであれば、先祖返りしようとも考えています。

 どんどんIT化が進んでいる中で、お客さまと店舗側とのこうした直接の触れ合いが薄れています。その皮膚感覚を逆に消費者は呼び覚ましたいのかを見極めたいのです。

NBにはない付加価値のあるオンリーワン商品をつくる

──次に商品政策についてですが、サミットは自社開発のPB(プライベートブランド)商品を絞り込む方針を打ち出しています。

田尻 そうですね。しかし、それはPBづくりをやめるということではありません。

 今、小売業界では、低価格訴求をメーンとするPBを取り巻く潮目が大きく変わってきています。マスコミの熱狂的なPB礼賛記事は半年ぐらい前からなりをひそめ、「もはや主流はPBではない」という論調が大手経済紙を中心に目立っています。

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聞き手

千田 直哉 / 株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア 編集局 局長

東京都生まれ。1992年ダイヤモンド・フリードマン社(現:ダイヤモンド・リテイルメディア)入社。『チェーンストアエイジ』誌編集記者、『ゼネラルマーチャンダイザー』誌副編集長、『ダイヤモンド ホームセンター』誌編集長を経て、2008年、『チェーンストアエイジ』誌編集長就任。2015年、『ダイヤモンド・ドラッグストア』誌編集長(兼任)就任。2016年、編集局局長就任(現任)。現在に至る。
※2015年4月、『チェーンストアエイジ』誌は『ダイヤモンド・チェーンストア』誌に誌名を変更。

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