店長主導型の店舗運営をもう一度やり直し、MD改革を成し遂げる=サミット田尻 一 社長

聞き手:千田 直哉 (編集局 局長)
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 そもそもナショナルブランド(NB)メーカーはPBの市場占有率について、ある一定の比率までは容認していますが、そのラインを越えると“PB潰し”に掛かってくるということを過去の歴史の中で何度も繰り返してきました。

 今は、その“PBが叩かれている”状態ですから、今後ある程度のPB比率に収斂されてくるものと見ています。そうなると安売り・デフレ一辺倒の経済市況からはだいぶ変わってくるのではないかと期待しています。

 そうした中で当社は、10年度の重点施策に「オンリーワン商品をつくる」というテーマを盛り込みました。ただ単にラベルを張り替えただけでは意味がないですから、NBにはない付加価値のある商品をできるだけ開発していくことにまい進していきます。

──商品開発を行う分野は主に何になりますか?

田尻 生鮮食品が主体にはなりますが、すべての部門が対象です。たとえばドライグロサリーでも、大きな売上ボリュームにはならないけれども、よいもので値ごろ感、価値がある商品というものが、いくつもあると思います。そうした商品をどれだけ品揃えできるかに挑戦します。簡単に言えば、“個性を出す”ということです。

 ただ、これも従来のチェーンストアオペレーションに乗せるのは難しい話です。“個性があってキラリと光る”企業は、せいぜい10~20店舗の運営規模ですから、これに当社のような100店近くの規模の企業が取り組むのは、相当なチャレンジで容易ではないことだと思います。

組織変更しマーチャンダイジング力を強化

──さて、田尻社長の持論は「マーチャンダイジングを完結するためには、商売人に徹することが大事になる」ですが、その実現のために、09年度から行っている“商売人プロジェクト”の進捗状況はいかがでしょう?

田尻 当社の現在の課題は、あまりにもバイヤーから店舗に送られる“指示文書”が多いことにあります。バイヤーが安易に発信する傾向が目立ち、仮に60人のバイヤーが毎日2枚出せば、店舗に120種類の指示が行くことになります。

 現場はその処理に翻弄され、通常業務がおろそかになるという事態が起きています。だから、本部と店舗の意思疎通をうまく行うことが、プロジェクトの大きな目的の一つです。過去にできたことが、なぜ今できなくなっているのかを分析し、解決していきます。その意味で、商売人づくりは、まだまだ緒についたばかりです。

──同時に進めているマーチャンダイジングの改革についてはいかがですか?

田尻 これは残念ながらまだ0点です。なかなか社員全員に理解してもらえていませんので、この10年度は組織を大きく変えて、改革に入り込んでいきます。

 3月16日に発表した新しい組織体制では、販売部と商品本部を統合し、営業本部とし、私が営業本部長を兼任します。そして販売部が「2エリア16ブロック」に分けて統括していた店舗については、エリア制を廃して10ブロックに再編し、営業本部のもとに直接置くかたちとします。

 もう一度、店長主導型店舗運営をやり直すことが今回の組織改革の最大のねらいです。そして、店長の上司であるブロック・マネジャーには、主に店長のサポートや教育に当たってもらうことで、店長の商売人としての力を育成していきたいと考えています。これらの結果、マーチャンダイジング力のアップに確実につながるものと見ています。

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聞き手

千田 直哉 / 株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア 編集局 局長

東京都生まれ。1992年ダイヤモンド・フリードマン社(現:ダイヤモンド・リテイルメディア)入社。『チェーンストアエイジ』誌編集記者、『ゼネラルマーチャンダイザー』誌副編集長、『ダイヤモンド ホームセンター』誌編集長を経て、2008年、『チェーンストアエイジ』誌編集長就任。2015年、『ダイヤモンド・ドラッグストア』誌編集長(兼任)就任。2016年、編集局局長就任(現任)。現在に至る。
※2015年4月、『チェーンストアエイジ』誌は『ダイヤモンド・チェーンストア』誌に誌名を変更。

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