7期連続で既存店売上高対前期比プラス成長中=ビッグ・エー上高正典社長

聞き手:千田 直哉 (編集局 局長)
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──口で言うのは簡単ですが、売れる商品だけを適正な在庫量だけ品揃えする、ということを徹底されたわけですよね。

上高 それを実現するうえで、大事な役割を果たしているのが商品開発会議です。毎週開催のこの会議の中で、商品の改廃を決めています。会議に参加するのは商品部 の人間だけではなく、経営幹部のメンバーと地区長以上のメンバーが参加します。多いときで20SKU、平均すると毎週10SKUぐらい入れ替えています。

 それでも、店舗のオペレーションが狂えば在庫回転率は悪化しますから、店にも標準仕様があり、おのおの基準を守ると適正な在庫回転率を維持できる ようになっています。今、1店舗当たり在庫金額は約900万円ですが、今後はこれを800万円にまで引き下げたいと考えています。

ドイツのアルディをめざす!

日本のディスカウントストアの多くがベンチマークしているのが、欧米で急伸するアルディとリドルだ。低価格かつ高品質を追求し、利用者の拡大をねらう
日本のディスカウントスト。アの多くがベンチマークしているのが、欧米で急伸するアルディとリドルだ。低価格かつ高品質を追求し、利用者の拡大をねらう

──商品開発会議が大きな肝になっているということですね。その商品開発に関する考え方を教えてください。

上高 ナショナルブランド(NB)の担当バイヤーとストアブランド(SB)を開発するマーチャンダイザーに分かれますが、SBチームのメンバーは5人全員が女性 です。理由は、基本的に当社の商品は、女性のお客さまが商品を選択し、料理されます。ですから女性の視点を外れることはありえないわけです。

 また当社は、商品を仕入れるかどうかを、バイヤーやマーチャンダイザーだけでは決定できない仕組みをとっています。サプライヤーさんの工場審査も、バイヤーだけでなく、経営幹部のメンバーが抜き打ちで工場を訪ねて確認しています。

──商品原価を落とす努力については、PB開発以外ではどのような取り組みを行っていますか?

上高 仕入れの仕方を工夫しています。SKU数を限定しているがゆえに、当社は単品当たりのマーケットシェアがかなり高いのが強みです。取り扱いロットが増える ことでお取引先さまのメリットも出ますから、そこで原価を下げていただく。とくに、一般食品の物流センターは、商品の調達機能も備えているのですが、そこ では「10t車一台でいくら」、という買い方をしており、返品はゼロです。メーカーさんにもかなりのメリットがあると思います。

──次にローコストで収益を出す仕組みについてお聞きします。まずは、売上高販管費率と粗利益率について教えてください。

上高 売上高販管費率は店段階で15%を目標にしています。現状でもそれが実現できている店が何店舗かはあります。粗利益率はそうとう低く設定しています。われわれは低価格高回転でビジネスをやろうとしていますから、その意味では低経常利益率になります。

 見ようによっては「リスクが大きい」と言われることもあり ますが、総資産回転率をずっと現在の水準で保つことができればリスクはありません。利益が出なくていいとまでは言いませんが、拡大再生産できるだけの最低 限の資金が生まれてくればそれでよいと思っています。

──本当に薄利多売というか、本当のDSですね。

上高 そうです。ただそのためには、本部(間接部門)と店舗(直接部門)の人数の比率を表す直間比率が9.2%と高すぎる点が課題です。11年度までに7%まで 落とし、最終的にはアルディUSAが実現している5.4%(推定)をめざしたいです。当社は本部人員157人で170店舗をオペレーションしていますが、 アルディUSAは当社とほぼ変わらない170人の本部人員で1000店舗もオペレーションしていますのでそれが目標です。会社の売上が増えれば増えるほ ど、本社人員を増やす企業が多いですが、それをやるとハードディスカウンターはできないのです。

──ここまで徹底してDSをつくろうとしている企業は、それほど多くはありません。

上高 実は、われわれはハードディスカウンターをめざす企業がもっと増えて欲しいと思っています。競争が激しくなれば当社ももっと考えるようになりますから。た しかに、DS業態に参入する企業は相次いでいて、かたち上の売価は下がっています。ですが、実態のオペレーションまでを含めた仕組み全体の競争はまだない ですから。早くわれわれの弱い部分を補うノウハウを持った競争相手が出てきて、そしてわれわれがそれを見習ってさらに業態革新を進める、という切磋琢磨を したいのです。

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聞き手

千田 直哉 / 株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア 編集局 局長

東京都生まれ。1992年ダイヤモンド・フリードマン社(現:ダイヤモンド・リテイルメディア)入社。『チェーンストアエイジ』誌編集記者、『ゼネラルマーチャンダイザー』誌副編集長、『ダイヤモンド ホームセンター』誌編集長を経て、2008年、『チェーンストアエイジ』誌編集長就任。2015年、『ダイヤモンド・ドラッグストア』誌編集長(兼任)就任。2016年、編集局局長就任(現任)。現在に至る。
※2015年4月、『チェーンストアエイジ』誌は『ダイヤモンド・チェーンストア』誌に誌名を変更。

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