圧倒的に低い原価率が容認される秘密 知られざる外資スーパーブランドのビジネスとは

河合 拓
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今回は外資トップメゾンの実態から、われわれ日本のアパレル企業が学ぶこと、をテーマに論じてみたい。そもそもブランドビジネスは、今の日本のアパレルビジネスとは全く違うものなのだが、日本のアパレル企業が世界に出ていき、勝っていくためには不可欠な視点であるので、その実態と要諦を赤裸々に解説したい。

Juanmonino/istock
Juanmonino/istock

スーパーブランドをスーパーブランドたらしめる「秘伝のタレ」

「日本のアパレルは独特ですよね。商品が欠品したら追加で再投入するそうじゃないですか」「そんな仕事をしていたら、いつまでたってもドタバタ騒ぎはやまないですね」

この発言は、某アパレル業界20年というベテランの口から発せられたと聞いて、あなたは奇異に感じないだろうか。多くを日本のアパレル産業について語ってきた私だが、当然ながら、海外のトップメゾンとよばれるスーパーブランドのコンサルティング経験もそれなりにある。実際、私が商社マン時代、常に「日本と海外のアパレルビジネスの進め方の違いはどれほどなのか」を知りたかった。上記発言は、世界を代表するスーパーブランド(トップメゾン)のジャパンカントリーマネージャとのディスカッションで、彼の口からでてきた言葉だった。

商社、それも繊維部門の人間となれば繊維・テキスタイルのことは何でも知っているように感じている方も多いと思うが、意外にも彼らは外資ブランドだけでなく、日本のアパレル・小売企業のオペレーションの違いさえ多くを知らないことが多い。私も、10年の実務経験があるといえ、そのほとんどを日本のアパレル企業のOEMに使ってきたため、世界のトップ・メゾン、スーパーブランドのオペレーションなどに精通するようになったのは、経営コンサルタントに転身してからだった。

なお私は、職業柄「二次情報」は全く信じていないし、ましてやメディアや素人調査をやって、「知ったように」書いている論考なども信じていない。私はある時期、世界コングロマリットのコンサルティングを数年にわたりやった経験がある。したがって今回お伝えする内容は、すべて一次情報である。

スーパーブランドの裏舞台は固い守秘に守られ、リージョンごとの自由度はほとんどないに等しい。実際、ある著名な日本のトップがグループを退社したのは、この「自由度がないから、ビジネスとしてのダイナミズムを感じられないからだ」といっていたことを思い出す。しかし、その裏には日本人が想像もつかないような「秘伝のタレ」が存在していた。今日は、可能な限りそのことについて語りたい。

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