「観光立国」復活へ前進=人手不足、混雑回避で課題も―訪日客回復

時事通信社
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バスに乗るために列を作る人ら
〔写真説明〕バスに乗るために列を作る人ら=18日午後、京都市東山区(時事通信社)

 2023年上半期の訪日外国人数が、コロナ禍前水準の6割超にまで回復した。日本の「観光立国」復活へ着実な前進が確認された形だ。とはいえ、宿泊業などで人手不足が深刻化。一部では過度な混雑によるオーバーツーリズム(観光公害)も顕在化しており、解決すべき課題は多い。

 「コロナの長いトンネルを抜け、国際線需要の回復が鮮明となった」。全日本空輸の井上慎一社長は19日、記者団に手応えを示した。同社の国際線便数は今月末にコロナ前の7割弱まで回復。この日は感染拡大で閉鎖されていた羽田空港第2ターミナルの国際線施設が約3年ぶりに再開され、本格的な訪日客受け入れ体制が整った。

 消費も堅調だ。円安効果も追い風に高級ブランドなどの免税品も売り上げが増加。「客単価はコロナ前の倍。とにかく高いものが売れる」(大手百貨店)との声も聞かれる。

 一方、コロナで宿泊客が急減し、多数の従業員を離職させてしまったホテルや旅館は、客足急増で今度は人手確保に苦戦。「客室の稼働を制限しているところもある」(大阪市内のホテル幹部)とされ、回復する需要の取りこぼしが懸念される。

 国内外からの観光客殺到は各地でさまざまな問題を引き起こしつつある。今月山開きを迎えた富士山では、過去に類を見ないほど多くの登山客が見込まれている。山小屋に宿泊できない人が徹夜で山頂を目指す「弾丸登山」による病人やけが人の増加も危惧され、地元自治体などが山梨県に登山者数の制限を要望した。

 京都市右京区の嵐山地区では、食べ歩きの観光客が道端などに捨てた大量のごみが住民らを悩ませている。一部店舗による自主的な収集では追い付かず、石川恵介・嵐山商店街会長は「火急の問題だ」と市に対応を求める。

 同市ではバス停に観光客が連日長蛇の列を作るなど交通網も「パンク寸前」(市内の旅館)。バス通勤する20代の会社員女性は「子どもの頃と全く違う。市民には不満がたまっている」と嘆いた。「観光と市民利用のすみ分け」(門川大作市長)を模索する市にも手詰まり感が漂う。国は地方や平日への旅行需要の分散で混雑回避を進める考えだが、さらなる対応を迫られそうだ。

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