コスト重視からSDGsへ大転換 ファストファッションブランドによるサステナブル化の実情

伴 大二郎 (株式会社ヤプリ エグゼクティブ・スペシャリスト/株式会社顧客時間 プロジェクトマネージャー/db-lab代表)
Pocket

”姿勢”を消費者に伝えることの難しさ

Photo by Terroa
H&Mは「クライメット・ポジティブ」を掲げ、環境に貢献する取り組みを全社で推進している

 次に見ていきたいのが、「ZARA」で知られる世界最大のアパレル企業、インデックス社です。彼らもまた、25年までに100%サステナブル素材に変えることを発表しています。店舗で再生可能エネルギーを使っている点もH&Mと同じ。

 ただ、同社は自らを「ファストファッションの対極にいる」としています。その理由として、十数個あるすべてのブランドがオリジナル製品を内製しており需要に合わせ製造量をコントロールできていること、過度の値引きをしていないこと、さらには上記のようなサステナブルな取り組みを行っていることが挙げられます。

 しかし、こういった取り組みは十分に消費者に伝わっているとは言えず、いまだにZARAをファストファッションブランドと認識している人は少なくありません。

サプライチェーン改革について説明する柳井正社長
ことサステナブルの取り組みをアピールするうえで、柳井氏の存在感の大きさは決してプラスに働いているわけではない

 最後は「ユニクロ」「ジーユー」を運営するファーストリテイリングです。こちらも「サステナブルはすべてに優先される」と謳っていますが、会長兼社長の柳井正氏の存在感や印象が強すぎることが、サステナブルへの取り組みをアピールするうえで障壁になっているきらいがあります。企業の掲げるメッセージよりも、柳井氏個人が日本の経済界などに対して発するコメントや見方ばかりがメディアに取り上げられ、結果、企業活動の内容が消費者に伝わっていないことが課題となっています。

 しかし、そんななかで注目すべきはファーストリテイリングが取り組むリサイクル活動です。昨年は8月末の時点で約9000万着を回収し、そのうち約3600万着を72の国と地域に寄贈しています。

 さらに昨年からはダウンのリサイクルをスタートしました。ダウンの原料の1つであるミズドリの羽は入手が難しくなりつつあり、羽毛を採取するためにミズドリの養殖を行うことも近年問題視されています。従来高価なものだったダウンを、気軽に買えるものにしたファーストリテイリングがこうした取り組みに着手するのはよい判断だと感じます。

1 2 3

記事執筆者

伴 大二郎 / 株式会社ヤプリ エグゼクティブ・スペシャリスト/株式会社顧客時間 プロジェクトマネージャー/db-lab代表
小売業界においてCRMの重要性に着目。一貫してデータ活用の戦略立案やサービス開発に従事した後、2011年にオプト入社。マーケティングコンサルタントを経て、 15年よりマーケティング事業部部長として事業拡大に向けた組織作りに着手。マーケティングマネジメント部やOMO関連部門等々を立ち上げ統括しながら組織を拡大。海外のイベントや企業訪問など、小売、リテールの情報を収集し社内外への発信活動を行う。21年にdb-labを設立し株式会社顧客時間にプロジェクトマネージャーとして参画。同年6月より、株式会社ヤプリのエグゼクティブスペシャリストに就任。

関連記事ランキング

関連キーワードの記事を探す

© 2024 by Diamond Retail Media

興味のあるジャンルや業態を選択いただければ
DCSオンライントップページにおすすめの記事が表示されます。

ジャンル
業態