商社をうまく活用できる企業だけが生き残る自明の理由!

河合 拓
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ユニクロ一強時代を生き抜く知恵は、商社活用しかない

 大手の商社は、このように「売り場」か「作り場」を押さえ、今後、統合しながらビジネスボリュームを拡大してゆくことになるだろう。この論説がでているころには大手商社の繊維部門の合併の記事がでているかもしれない。

  これに対して、専門商社の生き残りの道は何かと言えば、素材から組み立てられる能力を活用した機能素材開発、ということになるだろう

  例えば、イタリアのアパレルブランドは、ほとんどが工場を出自としていて、リテーラー型出自のSPA(製造小売)は少数だ。日本でも、WEB上で自由にパーソナルオーダーを組み込み、顧客と工場をダイレクトに結びつけている鎌倉シャツなど、海外でも評価の高いD2Cビジネスが台頭しており、このようなメーカーであることの必然性を強みとできない商流は短縮化されてゆく。

  とくに、ブランドというと伝統的に「コミュニケーション優先主義」が根底にあったように思うが、そうした曖昧模糊とした名前だけのブランドから、具体的な価値をもった商品やサービスのバリューベースに変化している。ブランドとは、裏に値崩れしない差別性と強烈なロイヤルティをもったファンがいるかどうかで評価される時代がくるだろう。

  ユニクロが激しい競争と値引き合戦とは無縁でいられるのは、他が真似できないほどの価値を圧倒的なコスパで出せるものづくりのノウハウがあるからだ。そうした本質的な議論(=自社の商品やサービスがそもそも競争力を持っているのかという議論)をないがしろにし、EC比率やAI活用のノウハウばかりマネても、売っている商品が競合と変わらないのだから、何をどうしてもコスト競争に陥ることは自明の理である。

 幸運にも、日本には素材産業という成長分野がある。特に合繊機能繊維は世界的にも成長しており、世界で日本が最も競争力をもっている領域だ。専門商社は、東レインターナショナル、帝人フロンティアのように、バックにマニュファクチュアリング設備をもっているところが多いし、天然繊維のコンバーター機能も持っている。

 大手商社、専門商社、いずれにおいても単なる卸という枠組みから抜け出し、打ち手が見つからないアパレル企業の裏方として、バリューベースのサービスを構築し、人(経営者派遣)、モノ(素材開発)、カネ(M&A)、情報 (デジタル武装)を複合的にミックスし、自社の強みをいかした川中の産業再編のトリガーとなってゆくだろう。商社不要論から商社活用論に論点の主軸は変化しているのだ。今後、商社の動きに目が離せない。

プロフィール

河合 拓(事業再生コンサルタント/ターンアラウンドマネージャー)

河合拓氏_プロフィールブランド再生、マーケティング戦略など実績多数。国内外のプライベートエクイティファンドに対しての投資アドバイザリ業務、事業評価(ビジネスデューディリジェンス)、事業提携交渉支援、M&A戦略、製品市場戦略など経験豊富。百貨店向けプライベートブランド開発では同社のPBを最高益につなげ、大手レストランチェーン、GMS再生などの実績も多数。東証一部上場企業の社外取締役(~2016年5月まで)

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