想像以上に深刻な魚離れ……千葉・外房で実験進む「鮮魚DX」がスーパーの魚売場を変える!?

中井 彰人 (nakaja lab代表取締役/流通アナリスト)
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魚離れとスーパーマーケット

 国内漁業の衰退には、さまざまな要因が指摘されているが、長期的な需要低迷の影響が大きい。食卓における魚の調理は肉食よりも手間がかかるうえに、子供が小骨を嫌がるなど魚食のハードルがあることも事実で、魚が敬遠されるというのはわからないでもない。

 しかし、「魚離れ」を助長したのは、生鮮食品の主たる購買場所がスーパーマーケットになったことが大きいのではないかという意見もある。スーパーマーケットは基本的に、セルフサービスによって効率性を上げて商品を安く提供するという、チェーンストア理論に基づいている。

 鮮魚に関しても、食べやすい切身にしてパッキングし、人手をかけないように、売場に置きっぱなしにして売っていることが多いが、本来、この手法は鮮魚の販売にはそぐわない。肉はざっくり言ってしまえば、鳥・豚・牛の3種類しかないため、その調理法はある程度知られているが、魚は多様な魚種があり、それぞれ食べ方が違う。誰でも知っているサケ、マグロ、ブリ、アジ、サバなどはいいとしても、それ以外の魚の食べ方を熟知している消費者は多くはない。

 食べ方がわからない素材を売場に置いていても売れる訳もなく、売れないから売場は狭められていく。こうした繰り返しが、スーパーマーケットにおける鮮魚売場の売上を落とし、結果的に需要も落ちていく。その繰り返しが長きにわたったことで、魚は食卓にのぼる機会を失ってきたのである。

角上魚類はなぜ売れるのか

 「セルフサービスではなく、説明販売をすれば魚は売れるのか」という問いに答えを示しているのが、「日本一の魚屋」を標榜して成長を続ける角上魚類(新潟県)だ。

 新潟寺泊の魚屋から発祥した同社は、群馬、埼玉、東京都下、神奈川と関東に南下しながら、現在22店舗を展開する鮮魚チェーンだ。2022年3月期のグループ売上高は約400億円に上る同社だが、2016年には307億円であり、6年で売上を3割も増やしている。

 スーパーマーケットと同じくらいの売場に丸魚、切身、刺身、魚総菜を所狭しと並べ、1店舗当たり平均で年商18億円を叩き出す。昔の魚屋のように、季節に合わせた旬の魚を仕入れ、食べ方を提案しながら、売れ行きに応じて、丸魚から刺身、切身から総菜へ加工して、ほとんどの商品を売り切ってしまう。売場に放置された魚は買いづらいが、こうした提案販売をすれば、どんどん売れていくのだ。それどころか、まだ知らないおいしい魚との出会いを求めて、角上魚類には遠方から客が殺到している。

 魚の“素人”であるパート・アルバイトを中心に鮮魚売場を運営している一般的なスーパーマーケットでは角上魚類の真似はとてもできない。百歩譲って、魚の調理方法、レシピなどについて知識を習得していったとしても、鮮度管理が難しいため、「どの段階で丸魚から切身に加工するのか」といった売れ残りロスの問題もあり、セルフサービスが基本のチェーンは、角上魚類のやり方は模倣したくてもできないだろう。

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記事執筆者

中井 彰人 / 株式会社nakaja lab nakaja lab代表取締役/流通アナリスト
みずほ銀行産業調査部シニアアナリスト(12年間)を経て、2016年より流通アナリストとして独立。 2018年3月、株式会社nakaja labを設立、代表取締役に就任、コンサル、執筆、講演等で活動中。 2020年9月Yahoo!ニュース公式コメンテーター就任(2022年よりオーサー兼任)。 2021年8月、技術評論社より著書「図解即戦力 小売業界」発刊。現在、DCSオンライン他、月刊連載4本、及び、マスコミへの知見提供を実施中。起業支援、地方創生支援もライフワークとしている。

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