【鮮魚部門2021年秋冬MD提案】サンマの不漁続くなか、「天然の熟成魚」が商機になる!

文・解説=西村弘(西村研究室)
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秋は魚が食卓の主役になる季節だ。だが、近年は「秋の味覚」の代名詞的存在であるサンマの不漁が続いており、店頭価格が高騰、食卓に登場する頻度も少なくなった家庭も多いのではないだろうか。本稿では、ロスを低減させるための加工技術の向上の方策を提言するとともに、今後の秋~冬の鮮魚部門の商品政策について考えてみたい。

サンマの不漁続く ロスを低減するには

 サンマやサバ、イワシ、ブリなどたっぷりと脂を含んだ青魚の季節になった。これらの魚は「安い」「おいしい」「健康」が揃った、体にも財布にも嬉しい秋の主役だ。しかし、水産業界では2019年前後からサンマの不漁が続いている。記録的な不漁となった20年に続き、今年も漁獲量は低調と予想されている。サンマの店頭価格は「高級魚」と言っていいほどに高騰し、昨年は「今年は(サンマを)食べられなかった」という消費者の声も多かった。

サンマのイメージ
近年は「秋の味覚」の代名詞的存在であるサンマの不漁が続いており、店頭価格が高騰している。 i-stock/marucyan

 このサンマの不漁は世界的な「魚食」の広がりに起因しているといわれているが、漁業者によれば、アザラシなど魚を捕食する哺乳類が日本近海に増えているという事情もあるようだ。食物連鎖の環境からみても、サバやイカ、アジなど「大衆魚」として親しまれてきた魚の減少は待ったなしの状況だ。

 「資源の大切さ」について新たな取り組みが求められる水産業界だが、食品スーパー(SM)も対岸の火事ではない。フードロス問題が叫ばれだして以降、多少の改善は見られるものの、売上追求型の量販店などでは、とくに夕方の時間帯、鮮度が劣化した商品を大量に並べているのをよく目にする。

 SMの鮮魚売場の大半は、日商の50%以上を15時以降に稼ぐといわれている。この夕夜間の売上高をつくるための商品を陳列する時間を16時~17時と想定する。この時間帯に視覚で品質を確認できる技能をチーフや部門スタッフが身につければ、見切りや店頭打ち出しなどにおいて臨機応変な対応が可能となり、値下げおよび廃棄ロスを激減できる。

 また、同時に加工技術も磨く必要がある。機会ロスを改善するためのポイントは、「売れる商品」をつくることにある。昨今は30分程度で調理可能な“お手軽料理”の提案が増えている。あるアンケート調査によれば、「できれば10分以内に(調理を)済ませたい」といったように“超スピード料理”を求める消費者も多いようだ。フライパン、またはオーブンで調理可能なメニューのほか、切り身や刺身、寿司など、素材の「新鮮色(身質の透明感や鮮紅色)」によって、消費者の目でも明らかに新鮮であると判断できる商品を品揃えできれば万全だ。

 消費者への伝え方の工夫も重要だ。たとえば

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