セブン-イレブンの7NOW全国展開へ!拡大するクイックコマースへの“懸念”とは

2024/04/03 05:54
中井 彰人 (nakaja lab代表取締役/流通アナリスト)
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コロナ禍の時期に、スマートフォンから注文するとすぐに商品を届けてくれる「クイックコマース」というサービスが欧米で一気に勃興し、巣ごもり需要の拡大を背景に日本でも多くの企業が参入した。しかし、その後、短期間で撤退する企業が相次いだのは、報道などでご存じの方も多いかもしれない。
そんな中、コンビニエンスストア最大手セブン-イレブン・ジャパン(東京都:以下、セブン-イレブン)が「7NOW」(セブンナウ)というアプリによるクイックコマースサービスを一気に拡大するという。現時点で北海道、関東地方、広島などで限定的に実施しているが、2024年度中には全店舗導入をめざして拡大する予定だそうだ。これまでの実績によれば、7NOWは店舗の売上をほとんど減らさずにプラスオンすることがわかったようで、これをもって加盟店の利益にもつながると判断したのだろう。

Joel Carillet/iStock

加盟店の配送負担なく、増収できる仕組み

 7NOWは専用の配送センターからではなく、顧客が指定した店舗で商品をピッキングする方式を取っている。そのため店舗在庫と連動したリアルタイム在庫連携が可能な仕組みを持っていて、注文先店舗にある商品のほとんどを、在庫状況を見ながら注文できる。

 注文後は、店舗で商品をピッキングして、連携する配送業者が顧客の指定場所に届けるという流れになっていて、配送に関して店舗従業員に作業負担が生じない。セブン-イレブンというフランチャイズを前提とした店舗網において、ピッキングの手間はあるものの、配送の負担が生じずに増収となるという仕組みが全国展開を可能としたのであろう。

 ただ、競合の多くが採算に乗せられなかったこのサービスを、なぜセブン-イレブンは全国展開可能な仕組みとして整えることができたのか。それは日本一「近くて便利」な店舗網を持っているからであろう。クイックコマースのビジネスモデルについてはデータ的な検証ができないため、ここからはあくまでも状況証拠からの推論となるが、これまでの事業者の動向から、その背景を考えてみる。

出典:セブン&アイホールディングスHP

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記事執筆者

中井 彰人 / 株式会社nakaja lab nakaja lab代表取締役/流通アナリスト
みずほ銀行産業調査部シニアアナリスト(12年間)を経て、2016年より流通アナリストとして独立。 2018年3月、株式会社nakaja labを設立、代表取締役に就任、コンサル、執筆、講演等で活動中。 2020年9月Yahoo!ニュース公式コメンテーター就任(2022年よりオーサー兼任)。 2021年8月、技術評論社より著書「図解即戦力 小売業界」発刊。現在、DCSオンライン他、月刊連載4本、及び、マスコミへの知見提供を実施中。起業支援、地方創生支援もライフワークとしている。
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