トライアルグループが「顔認証システム」の開発・導入に本腰を入れる理由
顔認証決済は小型店舗との相性が良い
前置きが長くなりましたが、顔認証決済に関する具体的な話に入っていきます。
トライアルグループでは店舗をサイズに応じていくつかの「業態」として分類しているのですが、顔認証決済の実証実験は、2022年より展開している小型店「トライアルGO」と、福岡市内にあるトライアルグループの本社で行ってきました。
トライアルGOは、われわれがかねて出店を進めてきた、最新テクノロジーを全面導入した「スマートストア」のより一層の拡大と、これまでにない購買体験の可能性を追求するためにつくられた新たな店舗フォーマットです。ここを実証実験の場に選んだのは、小型店で生じやすい「少量・目的買い」という買物傾向に、顔認証という決済方法がフィットするのではないかという仮説がありました。
われわれの業態の中には、週末に遠方よりクルマで来店され数日分の商品をお買い上げになるお客さまが多い「メガセンター」や、日常使いでありながら食品・非食品双方において比較的多数の商品を揃える「スーパーセンター」などがあります。これらは店舗規模に伴い商品の購入点数も多い傾向にあることから、前述したSkip Cart®️との相性が非常に良いです。
Skip Cart®️はお客さまが手に取った(スキャナーでバーコードを読み取った)商品に応じてクーポンを表示したり、関連商品をレコメンドしたりする機能があるため複数商品の買物に適しています。また備え付けのタブレット上で決済まで完結できるため、購入点数が多いことで生じやすい「レジ待ち」というシーンをなくすことができるのが大きなポイントです。
一方、トライアルGOのような小型店にいらっしゃるお客さまは、少量のお買物かつあらかじめ欲しいものが決まっていることが多い傾向にあります。欲しいものをすぐに買い、すぐ店外に出て、すぐに利用する。コンビニに行くときの動機と近しいのかもしれません。そうなるとSkip Cart®️よりも、サッと決済してお買物を終了できる顔認証のようなシステムのほうが合っているのではと思ったのです。
実際にトライアルGOにおける顔認証決済の利用は好評の声が非常に多く、実証実験では、トライアル社員のみならず、取引先のメーカー各社、実験店舗が位置する宮若市の職員など総勢約250名に利用いただき、仮説の裏付けを行うことができました。
システムの進化に伴い、実証実験の場も拡大
こうした実験を経て、今年1月、NEC様との協業に至りました。同社が持つ世界No.1(注)の認証精度を有する顔認証技術を取り入れた新たな決済システムと入場管理システムの実証を、1月末から2月中旬にかけて実験の場を順次拡大しながらスタートしています(下図)。店舗だけではなく、宮若市内の複数の施設に実験機器を設置していく計画です。
実証施設 | 施設内容 | 顔認証の実証内容 |
トライアルGO脇田店 | 次世代型スマートストア | 決済 |
グロッサリア脇田店 | 産地産直レストラン | 決済 |
MUSUBU AI | AI開発センター | 入場管理 |
TRIAL IoT Lab | AIデバイス開発センター | 入場管理 |
T MAISON WAKITA | 従業員寮 | 入場管理 |
NEC様の顔認証技術は、決済以外にも社会生活全体において活用ができるような高精度なシステムです。現在はトライアルグループのリテールDX拠点である宮若市で専門チームが共同研究を進めており、引き続き新たな購買体験や効率的な施設運営につながる活用の検討を行いつつ、さまざまな利用可能性を探っていきたいと考えています。
(注) 米国国立標準技術研究所(NIST)による顔認証ベンチマークテストでこれまでにNo.1を複数回獲得
※NISTによる評価結果は米国政府による特定のシステム、製品、サービス、企業を推奨するものではありません。
https://jpn.nec.com/biometrics/face/history.html