ホームセンターバローがオープンした「PROsite高浜店」、同店の取り組みをレポート!

森本 守人 (サテライトスコープ代表)
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ホームセンターバロー(岐阜県/和賀登盛作社長)が、開拓余地のある分野として注目するのがプロ市場。ここ数年、商圏特性に応じた品揃えや売場づくりを工夫。支持される独自フォーマットの構築を進めている。2021年7月にオープンした「PROsite(プロサイト)高浜店」(以下、高浜店)に足を運び、その取り組みをレポートする。

年1店のペースでじわりと出店進める

 ホームセンターバローは岐阜県に本部を置き、岐阜県、愛知県、三重県、静岡県で店舗展開する。

 同社事業の特徴は、「専門性の強化」をテーマに掲げ、主力のホームセンター(HC)に加え、多様なスタイルの業態、フォーマットを持っている点にある。ペット専門店、ガソリンスタンド、さらにタイヤショップなどを開発、専門性の高い施設や売場をHCに併設することで、地域需要に応えるとともに、競合店との差別化を図っている。

 そんな同社が、今後も開拓余地があるとみて、力を入れる分野がプロ市場である。従来、展開してきたHCの品揃え、売場づくりを見直し、プロにとって使い勝手のよいフォーマット構築にチャレンジ。これまでも扱いのあったカテゴリーでも、需要の大きいカテゴリーについては深掘りし、支持獲得をめざしている。

 1号店は2018年2月にオープンした「PROsite各務原インター店」。従来、同地ではレギュラーHCを営業していたが、17年の年末にいっったん閉店。改装後にプロショップへと転換した。売場面積は1000坪で、木材、工具、塗料、金物、作業用品・衣料、配管、建築資材といった現場で求められる商材を幅広く扱い、話題商品も交えた品揃えと売場づくりで新たな市場に臨んだ。

 1号店で手応えを得たのを受け、19年4月には愛知県名古屋市に「PROsite名港店」を投じる。売場面積は同じ約1000坪、1号店を踏襲しながらも、さらに店づくりに磨きをかけた。3号店は20年11月に出した「PROsite鈴鹿磯山店」。売場面積は、それまでと比べ半分以下の450坪。新たな条件のもと、集客力のある魅力的なプロショップをつくった。

 このようにホームセンターバローでは年間1店のペースで、じわりと店舗網を拡大。1店ごとに新たな取り組みも付加しながら、独自フォーマットの構築を進めている。

3種類の高さの什器を採用

PROsite高浜店外観
PROsite高浜店外観
PROsite高浜店 平松友二店長
平松友二店長

 今年7月1日、愛知県高浜市にオープンした高浜店は、ホームセンターバローにとって4店目のプロショップだ。名鉄三河線「高浜港」駅から直線距離で450mに立地。県道46号線に面し、クルマで各地からのアクセスに優れる。高浜市は鬼瓦で有名な三州瓦の産地として知られ、近隣は住宅街が広がる一方、商圏内には工場が点在、プロショップとの相性はよい。

 高浜店で最も大きな特徴は、これまではすべて既存HCからの業態転換だったのに対し、初めて新規で建てたことである。売場面積は302坪と、前回の鈴鹿磯山店より約150坪も小さく、非常にコンパクトな店舗となっている。

 取扱商品数は、1、2号店が売場面積約1000坪で約5万SKUだったが、高浜店は店舗規模が3分の1以下ながら、約3万8000SKUを確保している。これは3号店の鈴鹿磯山店と同水準を維持している。

 こうした品揃えを実現した工夫として挙げられるのは、高い什器の採用だ。

 1、2号店は高さ1500㎜と2100㎜の什器で売場を構成していたのに対し、3号店は主に2400㎜を使用。そして今回の高浜店は、同2400㎜と2100㎜だけでなく、1500㎜の什器も取り入れた。これは豊富な品揃えと、見通しのよい店内環境の両立をめざしたためだ。入口から中央部は主に1500㎜、店の奥や豊富に商品を扱うカテゴリーでは2100㎜、2400㎜を使用するといった使い方により、視認性を高めた。

業績は計画比30%増で好調に推移

 高浜店で特徴のある売場、施策について紹介する。今回、コンパクトな売場を背景に地域需要、また購買頻度などを考慮し、カテゴリーによってメリハリをつけている。具体的には1、2号店では多く扱っていた木材はじめ建築資材、各種配管については大幅に絞り込む一方で、工具や作業用品、衣料については従来どおり拡充した。

 入口すぐの場所に立ち、まず感じるのは前述のどおり、視認性の高さ。店奥に向かい、主通路を挟んで左側は主に工具や道具類、右側には材料や消耗品の売場を配置する。

 工具のうち電動工具売場は、話題商品も交えながら多くの実機を展示。接客にも力を入れており、隣接する場所には商品知識が豊富な従業員が常駐する「プロカウンター」を配置している。

 入口すぐ、左側の場所には、先端工具のうち購買頻度の高い商品を集めた売場を配置。このように目的買いができる利便性を追求する取り組みが随所で見られる。

 主通路を挟んで反対側にあるのは作業衣料。近年、話題のファン付き作業着のほか、カラフルでデザイン性の高い商品も多数、扱っている。

 このほか床材売場の近くでは、弾力性があるクッションフロアを販売。通常、小型のプロショップでは扱わない商材だが、地域の需要、お客の声をもとにきめ細やかな品揃えをしている。

 オープン後、業績は計画比30%増と好調に推移。平松友二店長は「お客さまの声に耳を傾けて、ニーズを品揃えや売場に反映し、次の出店につなげられるような店舗となれるよう努力したいです」と意気込みを口にする。

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記事執筆者

森本 守人 / サテライトスコープ代表

 京都市出身。大手食品メーカーの営業マンとして社会人デビューを果たした後、パン職人、ミュージシャン、会社役員などを経てフリーの文筆家となる。「競争力を生む戦略、組織」をテーマに、流通、製造など、おもにビジネス分野を取材。文筆業以外では政府公認カメラマンとしてゴルバチョフ氏を撮影する。サテライトスコープ代表。「当コーナーは、京都の魅力を体験型レポートで発信します」。

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