あのピエール・エルメ監修のドーナツを発売!ミスタードーナツが他社との共同開発に注力するワケ

松尾 友幸 (ダイヤモンド・チェーンストア 記者)
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安売りをやめてブランド力を高める

 ミスド・ミーツのような高品質の商品を開発するのは、ミスタードーナツのブランド戦略の抜本的な見直しへの布石でもある。

 ミスタードーナツといえば、定期的に実施されていたドーナツ100円、パイ120円のセールに象徴されるように、「安い」というイメージを持っている消費者は少なくない。セール期間以外でも、店内で一から製造しているためかなりの手間とコストがかかっているにもかかわらず、ドーナツの定番商品の大半は100円台前半と非常に低価格だ。

 しかし、人件費や物流費が高騰するなか、原料の配送回数や仕入れ会社の見直しなどさまざまな手を打ってはいるが、現在の価格を維持するのも難しくなりつつあるという。

 こういった現状を受け、今後はミスド・ミーツや定番商品のリニューアルにより品質を向上させ、その価値に適した価格を設定する考えだ。そのため、前述のセールは16年に終了している。「セールをやめたことが現在のブランド戦略に生かされている。『ドーナツは100円』というイメージから脱却しつつあるからこそ、ブランド力が高まりミスド・ミーツのような付加価値の高い商品が売れるようになった」(宮島氏)。

事業開始後すぐに教育施設を開設

 ミスタードーナツは以前から品質向上のための取り組みを継続してきた。1号店がオープンした1971年にはすでに、フランチャイズによる多店舗展開を見据えた教育施設「ミスタードーナツジャパントレーニングセンター」(現ミスタードーナツカレッジ)を開設。同施設では各店舗の店長などを対象に、ドーナツの製造のほか、接客方法や品質管理などについて教育している。

 とくにミスド・ミーツでの他社との共同開発商品については、協業先のブランドイメージを損ねないようにするため、その都度エリアマネージャーがエリア内店舗の店長を招集し、製造方法について綿密なレクチャーを実施している。

 20192月期第2四半期決算では、ミスタードーナツを中核とするダスキンのフード事業は増収増益を達成している。ミスド・ミーツでの他社との共同開発商品や100円セールの終了などによるブランド力向上のための取り組みが、消費者に受け入れられ始めている証拠だろう。

 

「ダイヤモンド・チェーンストア」2020年3月1日号では、ミスタードーナツのレポートを掲載する予定です。商品だけではなく、ミスタードーナツの店舗政策・出店政策なども詳細に解説しています。お楽しみに!

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記事執筆者

松尾 友幸 / ダイヤモンド・チェーンストア 記者

1992年1月、福岡県久留米市生まれ。翻訳会社勤務を経て、2019年4月、株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア入社。流通・小売の専門誌「ダイヤモンド・チェーンストア」編集部に所属。主に食品スーパーや総合スーパー、ディスカウントストアなど食品小売業の記者・編集者として記事の執筆・編集に携わる。趣味は旅行で、コロナ前は国内外問わずさまざまな場所を訪れている。学生時代はイタリア・トリノに約1年間留学していた。最近は体重の増加が気になっているが、運動する気にはなかなかなれない。

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