調剤がドラッグストア業界の成長をけん引!

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日本チェーンドラッグストア協会(東京都)は2022年4月15日、「ドラッグストアにおける調剤の動向」を発表した。それによると、21年度のドラッグストア(DgS)の調剤額は対前年度比9.8%増の1兆1738億円となった。前年度は初めて1兆円を突破。15年度の調査開始以来、毎年度10%程度の伸び率を維持している。調剤が全体の成長をけん引している格好だ。

調剤の伸び率は全カテゴリー中トップ

 日本チェーンドラッグストア協会(東京都:以下、JACDS)の「ドラッグストアにおける調剤の動向」によると、2021年度の調剤医療費総額に占めるDgSの調剤額割合は暫定値※注で15.6%増と、前年度から1.4ポイント(pt)高まった。DgSの全国総売上高(推定値)に占める調剤額の割合は13.7%で、前年度から0.4pt拡大した。

 JACDSは22年3月に「2021年度版業界推計 日本のドラッグストア実態調査」においてカテゴリー別売上高の動向を発表している。21年度の調剤額の伸び率は、「調剤・ヘルスケア」(対前年度比の伸び率7.8%増)、「ビューティケア」(同0.8%減)、「ホームケア」(同8.7%増)、「フーズ・その他」(同7.7%増)の伸び率よりも高い。つまりDgS業界の成長は調剤がけん引しているといえる。

図表●ドラッグストアの調剤額・伸び率・比率

 JACDSの池野隆光会長は、「調剤の伸び率は10%近くいくだろうなとは思っていた。DgS全国総売上高に占める割合は13.7%だが、調剤を併設しているDgS企業もここ最近は3ケタの薬局を新規開局しているので、全体としては上がっていくだろう」と話す。

 JACDSは「2025年にDgS業界を10兆円産業にする」ことを目標に掲げている。

 「その時点での調剤額は2兆円と想定している。つまりDgSの売上高の20%が調剤ということになる。2兆円、20%はあくまで通過点。われわれはさらに比率を高めていこうと考えているわけではないが、額自体は調剤市場(調剤医療費総額)7兆8000億円程度が仮に拡大しなかったとしても、われわれのシェアは高まるだろうという見通しは立てている」(JACDSの田中浩幸事務総長)。

 このまま順調にDgSの調剤は成長していくのか。

 22年度の調剤報酬改定では、調剤基本料「3ハ」(32点)が新設され、「同一グループの薬局数が300以上」かつ集中率が「85%以下」の薬局の基本料を10点引き下げて32点とした。調剤併設店舗を展開する大手DgS企業にとっては“向かい風”だ。

 調剤基本料「3ハ」について、JACDSの田中事務総長は「“収益率”が高いということが1つの根拠になっていると理解している。今後、たとえば100店舗、あるいは数十店舗でも“収益率”が高いという調査結果が出れば、またどこかで数字の見直しが出てくるだろう。そうなればわれわれだけではなく薬局全体に影響する。改定によって収益率が下げられることをいいとは決して思っていないが、われわれは収益率を極大化しようという方針で店を出しているわけではない。われわれは10兆円産業化へ向けた活動の一環として粛々と調剤の取扱店舗を増やしていく」と話す。

 同じくJACDSの中澤一隆専務理事は「42点から32点に調剤基本料が減らされたわけだが、10点は100円なので処方せん単価が1万円とすると実額は100分の1。売上ベースで見ればそれほど大きな影響はなく、1年後にはほとんど無視できる数字になると考えている」とみる。

※注:2021年度の調剤医療費総額は未公表のため、2020年度と同額と仮り置きして計算(暫定値)

調剤報酬改定の受け止め方はさまざま

 調剤に注力するDgS企業は、22年度調剤報酬改定の事業への影響をどのように見ているのか。

 ウエルシアホールディングス(東京都:以下、ウエルシアHD)は今回の調剤報酬改定によって調剤部門の粗利益率は0.6pt悪化するとしたうえで、同社の松本忠久社長はリフィル処方せんについて「店舗数の多さが私たちにとってプラスに働いてくる。リフィル処方せんの第1回目を応需したときの薬剤師の接遇について、とくに力を入れて教育をしていく。通常の薬剤師の知識に加え栄養学まで勉強ができるよう範囲を広げて、患者さまとのコミュニケーションを通じてさらに薬剤師の能力を伸ばしていきたい」(22年2月期決算説明会)と力を込める。

 スギ薬局(愛知県)の杉浦伸哉常務(事業本部長)は「総じて厳しいとの印象で、現在、種々の対応策を検討しているところだ。だが近年、調剤分野では対人業務が重視される方向性の中、薬剤師が評価される基準が明確になったことはよかったと感じている」と説明する。

 トモズ(東京都)取締役の山口義之氏(薬剤部兼在宅推進室兼薬局事業連携室分掌)は「地域包括ケアシステムが構築される方向性にあるなか、今後、さらに在宅医療が進むだろうと予想できる内容でした。一方、改正薬機法でオンライン服薬指導が可能となったこともあり、規制緩和の流れも強まりました。その1つはリフィル処方せんの導入です。調剤を行う側からすれば、薬局、薬剤師の仕事の重みが増したかたちです。さまざまな意見があるようですが、医療機関の規制が緩和されたとの印象を受けました」と話す。

 龍生堂本店(東京都)の関口周吉社長は「今回の調剤報酬改定は、全般的に薬剤師の業務がかなり評価されたととらえています。本来、薬剤師がやるべきことがはっきりわかりました。それはそもそも当たり前のことですが、薬局、薬剤師の仕事というものに、あらためてスポットライトをきちんと当ててもらえたという感触を得ています。もちろん、調剤基本料など細かいところには、根拠が気になったり、複雑な思いが残ったりする部分もあります。ですが、後発品調剤体制加算も残っていますし、やはりわれわれが努力してきた部分はしっかり評価してもらっていると思います」と明かす。

 大賀薬局(福岡県)取締役調剤薬局事業部部長の橋野勇一氏は「弊社にとっては、将来的に描いている方向に進んでいて、『やってきたことがかたちになった』改定だと受け止めています。対人への流れに加え、地域というキーワードも多くなっています。薬局は地域にどう根差すかが大事ですし、国の方針もそちらに向かっています。その点、弊社は『相談薬局』として地域に根差してきたので、そこを評価された改定になったと感じています」と話している。

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記事執筆者

1979年生まれ。2009年6月ダイヤモンド・フリードマン社(現ダイヤモンド・リテイルメディア)入社。「ダイヤモンド・チェーンストア」誌の編集・記者を経て、2016年1月から「ダイヤモンド・ドラッグストア」誌副編集長、2020年10から同誌編集長。

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