2024年問題で切迫!小売業の物流改革のゆくえと成功事例とは
目先の対応策と中長期的な物流「戦略」を
このように物流改革が本格化する食品小売業界。しかし、その改革は単に物流現場の改善だけで解決できるものではないようだ。物流は、製・配・販のサプライチェーン全体や店舗オペレーションとも深く結びついている。そのためこれらを含めて最適化を図らねばならず、それは従来の事業システムそのものを再構築していくような抜本的な改革を必要とする。
現在の食品小売業界の置かれた状況を、イオン執行役物流担当の手塚大輔氏は「小売企業が自らの責任のもとで独自の物流戦略を立て、サプライチェーン全体の効率化をどのようにデザインしていくかが問われている」と述べている。

では、食品小売企業は今後、いかに手を打っていけばいいのか。ローランド・ベルガーパートナーの小野塚征志氏は「まずは、先進的な企業の取り組みを研究することから着手するのが望ましい。そして目先の対応策を確実に立てることと、中長期的な戦略や投資計画を立てることが重要」と指摘する。
目先の対応策では、差し迫った2024年問題で事業が滞らないように対策を進めたい。まずは前出の政府からの「荷主事業者・物流事業者の取組に関するガイドライン」の着荷主事業者に実施が求められている事項に着実に対応していくことが先決だ。
国内大手イオン(千葉県)はすでに2年ほど前から物流問題を見据えて、グループ内でさまざまなPoC(概念実証)を重ね、そのなかでの好事例を「納品時間と日別物量の平準化」「荷下ろし時のドライバーの附帯作業の削減」など4つの改善策にまとめ、これをグループ各社で実行することで、2024年問題で生じるドライバーの労働力減を上回る効率化を実現させる計画だ。
全国に2万店超のコンビニエンスストア(CVS)を展開するセブン-イレブン・ジャパン(東京都)は、1970年代に構築した「セブン-イレブン」の共同配送ネットワークを担う卸や物流事業会社などと、サプライチェーン最適化のための協同組合を設立。加盟店オーナーにも理解を促しながら対策を進めている。
このように大手企業がグループ内や自社物流を担う企業間で連携を強める一方、前出の「北海道物流研究会」では、イオン北海道(北海道)と北雄ラッキー(北海道)が共同配送を計画するなど、異なる企業同士で手を組み改善を図る動きもある。
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