特許情報で分析するアマゾンのドローン配送 構想10年、ついに「Prime Air」が始動?

山内 明(知財ランドスケープCEO/シニア知的財産アナリスト〈AIPE認定〉/弁理士)
Pocket

ドローン配送戦略のカギ?
「センス・アンド・アボイド・システム」とは

 図表②は、その米国特許10402646の説明図であり、上空のドローンから地面に向かってカメラ撮像し、空中の電線などの障害物や、地面に放置された自転車や走り寄る飼い犬などの障害物を判別し、安全かつ最短となる航路で配送可能とする制御システムが開示されています。

図表② アマゾン名義の米国特許10402646(航空機のための対象物検出及び回避)の説明図

 これがドローン配送戦略のヒントだと確信した著者は、特許情報の枠を超えて関連しそうな情報を鋭意収集した結果、この制御システムはアマゾンが「センス・アンド・アボイド・システム(sense-and-avoid system)」と称するものであり、図表②からも想起される通り、操作者による目視監視を不要としつつ多数のドローンを運行する鍵となることを突き止めました。

 本制御システムおよびその関連技術が上述した第135スタンダード認証の取得に役立ったことは間違いなく、アマゾンが本特許技術を活かして攻勢に出ることが容易に将来予測されます。

 以上より、ロジスティクス分野DXの先駆者たるアマゾンによるPrime Airの本格始動は時間の問題であり、ロジスティクス分野におけるドローン配送の本格普及トリガになること必至といえるため、要注目です。

<三井物産戦略研究所・高島勝秀のひと言解説>

 インフレ下のコスト増、とくに人件費の高騰は深刻で、小売業に従事する働き手不足も緊迫化しています。「1人の作業者が、遠隔で複数台を運行できる」というテクノロジーは、ドローンだけでなく、配送ロボなどでも求められており、今後の拡大・普及を考えるとまさに必須の技術といえるでしょう。

 本件はドローン(空輸)の領域ですが、制御システムの重要性は陸運でも言えることで、もちろんそちらへの応用・活用も考慮されていると考えられます。他社にさきがけてドローン技術を構築しようとするアマゾンのこうした動きは、クラウドや決済、フルフィルメントとこれまでの同社の取り組みを考えると、自然の流れとも言えます。今後は、自社で開発・活用した技術やノウハウの外販の可能性も十分考えられ、同社の新たな利益の源泉となりうるかもしれません。

1 2

関連記事ランキング

関連キーワードの記事を探す

© 2024 by Diamond Retail Media

興味のあるジャンルや業態を選択いただければ
DCSオンライントップページにおすすめの記事が表示されます。

ジャンル
業態