アスリートと取り組む次世代育成 #2 車いすテニス・国枝慎吾選手と歩んだ14年間

北沢 みさ (MK Commerce&Communication代表)
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車いすテニスの認知を広めたい

 国枝選手がユニクロとパートナーシップを結んだもう一つの理由は、ユニクロの持つ情報発信力だ。「やはり、車いすテニスの認知を拡大していきたいという強い思いがありました。僕の子供時代は、車いすテニスがどういうものなのか、情報があまりなかったんですよ。いまはYouTubeやSNSもあるので、車いすテニスについての発信を自分自身も心がけていますし、メディアにももっと発信してもらいたいと思っています。ユニクロと一緒に活動することで、自分のことを取り上げていただく機会が増えて、車いすテニスをもっと知ってもらいたかったですし、やりたいと思う子供たちが増えていったらいいな、と思いました」(国枝選手)

 国枝選手の「車いすテニスの認知をもっと広めたい、普及させたい」という思いに賛同し、ユニクロは国枝慎吾選手個人の活動をサポートするだけでなく、世界中で大小合わせて年間160大会ほど開催されている車いすテニスツアーのタイトルスポンサーを務め、世界中で車いすの発展をサポートしている。

国枝慎吾選手

ユニクロが初めて競技用のウェアを開発

 ユニクロが国枝選手とのパートナーシップの中で、初めて挑戦したのが、競技用ウェアの開発だ。ユニクロも以前からオリンピック日本選手団の公式服装の提供などはしていたが、競技用のウェアを提供するのは初めてだった。着用する側の国枝選手に、不安はなかったのだろうか。

 「それが、最初に契約した時にいただい試作品が、それまで着ていたテニスウェアよりも格段によかったんです。軽くて着心地もいいし、動きやすいし、汗の処理も早い。本当にびっくりするくらいよくて、その驚きは今も覚えています」

 「その後も、毎年いただくウェアが常にアップデートされていて、さらに軽く、さらに汗が気にならなくなっていくんです。僕の欲しいものを、先回りして作ってきてもらっている感じです。ただ、僕はメッシュ素材が好きなので、そこは特にこだわりました」

 国枝選手がユニクロのデザイナーやパタンナーなど商品開発部門の社員と会うのは、年に数回。その限られた機会の中で、前回の打合わせで国枝選手がふと漏らした言葉や試着時の動きなどをとらえて、次に会った時には国枝選手のパフォーマンスをより最大化できるよう改良しているのだという。

 選手一人ひとりに合わせた競技用ウェアを開発して、実際その選手のパフォーマンスが上がり、選手がいい成績を残す一方で、ユニクロはそのノウハウを自社の商品開発に生かし、一般のお客様に提供する。ビジネスとしても、非常にいいサイクルができている。

国枝慎吾選手

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記事執筆者

北沢 みさ / MK Commerce&Communication代表

東京都出身、日本橋在住。早稲田大学第一文学部卒業。
メーカーのマーケティング担当、TV局のプロデューサーの経験を経て、
1999年大手SPA企業に入社しマーケティング・PRを12年、EC・WEBマーケティングを8年担当し、ブランドの急成長に寄与。
2018年に独立後は、30年に渡る実務経験を活かし、小売・アパレル業界を中心に複数企業のアドバイザーとして、マーケティングおよびEC業務を支援中。

 

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