デスティネーション・ストア成功させ1兆円めざすバローHDにいま学ぶべきこととは
バリューチェーンの改革で今後、得られる果実は?
このように中核事業であるSMバローの競争力再構築で成果を上げたバローHDだが、もう1つ注目すべきことがある。製造小売(SPA)化を含む、バリューチェーンの効率化で、今後どこまで収益性を向上させられるのかという点だ。
バローHDは、傘下に連結子会社54社を擁する。SMやドラッグストア(DgS)、ホームセンター(HC)といった小売企業だけでなく、調味料メーカーや水産加工会社などが連なる。しかしバローHDが志向するのは単なる商品開発特化型の企業体ではない。「当社は仕入れ、物流、ほかの間接コスト、そして小売をトータルで手掛ける『流通業』。販売力を起点にバリューチェーン技術を生かすのが強みだ」と小池孝幸社長は語る。
調味料メーカーを買収したのも、単に調味料商品を開発するだけではない。畜産の味付け肉の開発や総菜商品の独自開発でも本領を発揮するし、コストメリットも享受できるからだ。バローHDは、傘下の複数企業の機能を組み合わせることでバリューチェーンの効率化と高付加価値化を図っているのだ。
ただし、現状でこの取り組みが、たとえばSM事業の明確な収益性向上というかたちで寄与しているかといえば課題が残る。理由は、各企業がすべてプロフィットセンターとして機能しているため、中核事業の収益性向上というかたちでは見えにくいこと、バリューチェーンはまだ未完成でこれからさらなるM&Aを視野に取り組んでいくこと、そして現在、買収効果を最大化するための取り組みに着手しているからだ。この効果が十分に発現されるにはまだ時間を要する一方で、確かな伸びしろがありそうだ。