デスティネーション・ストア成功させ1兆円めざすバローHDにいま学ぶべきこととは

阿部 幸治 (ダイヤモンド・チェーンストア編集長)
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数年越しでたどり着いたD・S、そして開発したネオD・S

 バローHDが「異変」を感じたのは、15年3月期頃のようだ。14年度までの5年間で約100店という怒涛の新規出店を行った一方で、「手薄な投資となった既存店の競争力は低下していった」と本誌16年9月1日号で田代正美会長兼CEO(当時は会長兼社長)は語っている。そこで同社は15年度からの3カ年で新規出店を減らし、SMの既存店の改装に力を注いだ。

 この頃、田代会長は「SMに対する来店動機が変化した」ことを感じ取ったという。これまでは、価格の安さや商品の豊富さよりも「近さ」という利便性が重要だったからドミナントの網の目を締めていけばよかった。ところが、異業種を含む競合店が増え、よりお客から近くにある店が食品を取り扱うようになったことで、差別化を図らなければならなくなったという趣旨の発言をしている。

 そこで、16年度より「地域一番店」「カテゴリーキラーSMへの進化」をめざす方向に舵を切る。背景には人口減と高齢化もある。「地域一番店」にならなければ店舗の収益性が高まらないからだ。具体的には生鮮の価格戦略をEDLP(エブリデー・ロープライス)に切り替えた店舗を16年に相次いで実験、当時40~60%も売上を伸ばしたことで自信を深めた。そして、グループのSMタチヤ(愛知県/武田大輔社長)のノウハウを活用したバロー店舗の「生鮮カテゴリーキラー」化が奏功し、19年3月期頃より既存店売上高に下げ止まりの気運が見えた。迎えた20年3月期には、SMの競争力を再構築するための施策として、「D・S」に定めたことを明らかにした。

 その後D・S化を続け、23年3月期末時点でバローの店舗数240店中70店がD・Sとなった。D・Sが全体を持ち上げるかたちで、コロナ禍以降高い水準で既存店売上高を維持している。

バロー
バローHDは、懸案だったSM事業の競争力再構築策を「D・S」「ネオD・S」に定め、成長戦略を加速させる

 だが、新たな課題も浮上してきた。D・Sはその性格上、売上上位の店の売上をさらに高める「トップアップ」の戦略であるため、既存店との格差が拡大したのだ。その是正に向け、現在進めているのが「ネオD・S」である。D・Sの要素を入れながら、プロセスセンター(PC)の活用など効率化を進める。具体的には売上構成比で約25%を占める売上10億円未満程度の小規模店舗をネオD・S化することで収益性を大きく改善させる戦略だ。

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記事執筆者

阿部 幸治 / ダイヤモンド・チェーンストア編集長

マーケティング会社で商品リニューアルプランを担当後、現ダイヤモンド・リテイルメディア入社。2011年よりダイヤモンド・ホームセンター編集長。18年よりダイヤモンド・チェーンストア編集長(現任)。19年よりダイヤモンド・チェーンストアオンライン編集長を兼務。マーケティング、海外情報、業態別の戦略等に精通。座右の銘は「初めて見た小売店は、取材依頼する」。マサチューセッツ州立大学経営管理修士(MBA)。趣味はNBA鑑賞と筋トレ

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