SDGsは諸刃の剣 日本のアパレルに突きつけられた戦略的判断とは

河合 拓
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これが「戦略」というものだ!

 若い人に言いたいのは、これが「戦略」というものだ、ということだ。もし、批判があればいつでも言ってもらいたい。これ以上の政策は存在しないだろう。ちなみに、この政策は私が30代のころつくったものだったが、まだ無名の私がいくら叫んでも、経産省など夢のまた夢。今なら、個人の名前で会議を開催することだって可能だが、当時の私はまったくの無名で三菱商事にさえ、「書籍もだしてないコンサルとつきあえるか」と門前払いをくらったものだ。私が、売名行為ともいえる露出(今は、節操のない露出は控えている)を繰り返してきたのはこのためだ。これも若い人にきいてもらいたいのだが、「自分じゃ無理だ」と諦める前に、私のように、ならば、と数年掛けて書籍を出し、TVにもでてみろ、といいたい。私はこうやって自分の思いをつらぬいてきたのである。

 この産業政策は、あの大前研一氏から絶賛され、「あの連中ならたらい回しにされるだろうが、やってみろ」と応援された。その後、私は彼の私塾で事業戦略論や産業政策論を教えるようになった。こうして、20年前につくった政策は、命を守り12年もかけて経産省に渡されたのだ。

  残念なことにこの政策はまだ実現されていない。なぜなら、本政策には予算もついたのだが、私が大病にかかってしまい、この政策を他のコンサル会社に委ねなければならなくなったものの、この政策の意味を理解するシンクタンクやコンサル会社が皆無で、誰も手を挙げなかったからだ。「応募者ゼロ」という信じられない結果となり、そのため、いつしか分科会という形に矮小化され、大手商社達の覇権争いの中でついえてしまったのである。

  改めてこの政策のポイントを解説したい。当時中国と日本の調達物流(当時は、オフショア生産は70%だった)が商社によって、ビジネスフローがバラバラにされていた。

 発注、海外出荷、国別銀行間決裁ルール、委託加工貿易の資産移転の海外証左、さらに、VMI(在庫発注点を決めて発注書をきらなくともベンダーが決められた量まで商品を出荷する。そのときの在庫の移転をいつにするかは、常にVMIの課題となっている。特に、課題や希少性の高い商品がこれにあたる)のスキームなども盛り込んだ。また、資産移転や決済方法もドル通貨を使わない。もっとも有利なハードカレンシー(外貨決済可能な通貨)で行い、為替の変動を吸収する。

 これが、私が20年前に考えた産業戦略である。失礼ながら、誰も着ないようなルイ・ヴィトンやエルメスの話に興じ、「生めよ増やせよ」とかけ声だけの標語をつくっている暇があれば、政策の作り方を学んでいただきたいと、今の担当者に申し上げたいものだ。

 このように、デジタルSPA (これも経産省に採択されるも、いつしか曲解され、某大手システム会社が理解できない投資を行っている)や、トウキョウショールームシティー戦略(残念だが、日本という国に絶望し、書籍に書いて後世に残しておこうと考えている)、また、今後、私はオフショアの研究に身をささげたいと思うが、一人でも多くの方が私の考えに賛同してくれることを祈っているだけだ。

 

プロフィール

河合 拓(経営コンサルタント)

ビジネスモデル改革、ブランド再生、DXなどから企業買収、政府への産業政策提言などアジアと日本で幅広く活躍。Arthur D Little, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナーなど、世界企業のマネジメントを歴任。2020年に独立。大手通販 (株)スクロール(東証一部上場)の社外取締役 (2016年5月まで)
デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言
筆者へのコンタクト
https://takukawai.com/contact/index.html

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