アパレル産業の新世界、生存方法はアマゾン・楽天・ヤフーの傘下入りかデジタル企業への変革だけ

河合 拓 (株式会社FRI & Company ltd..代表)
Pocket

3大ネット企業のマーケットプレイス構想とは

 ここからは、あくまでも私の想定ではあるが、私が考案した商社を中心としたデジタルSPAに似たビジネスモデルが最も妥当と考えるべきだ。順を追って説明する。

 アパレル側から見れば、モールに出店することは自社の顧客を取られ、顧客のビッグデータも開示してしまうというリスクがあるが、とはいえ今のアパレルにはオウンドメディアに顧客を誘引する投資ができる企業はほとんどない。数々の役員との会話の中で、私が感じるのは、日本のアパレルはとにかく保守的だということである。

 彼らはおそらく変動費で家賃を払い、少しでも売上を上げるためにモールに出ようという流れになる。

 私がスクロールの取締役をやっていたとき、新規顧客を獲得するため、20億円を使って顧客を集めたことがあったが、株主から総攻撃にあった。Amazonは赤字が続いても株価がどんどん上がっていったので、私はてってきり投資先行型のネットビジネスを理解してもらえると思ったのだが、実態は逆だった。巨大な投資を行ってCPA (顧客獲得コスト)を綿密に計算したにも関わらず、全く理解してもらえなかった。その後、ゴルフをしにタイに行ったのだが、ある株主から「俺の資産を目減りさせておいてタイ旅行か!」と怒鳴られたぐらいだ。その後、同社の株価は3倍になっているのだが…。

 このように日本企業は、株主はビジネスの素人だし経営は先行投資を極端に嫌がる傾向にある。加えて、新型コロナウイルスとの共存はこれからも長期に渡って続きそうだ。ならば日本のアパレルは、短期的な売上を求め潤沢な資金力を持つAmazon、楽天、Zホールディングスなどのネット企業の傘下に落ちると考えるのが自然だろう。実際、ビームスはAmazonのプライベートブランドの供給を始めた。

 こうしたデジタル企業のプライベートブランドを供給することは、双方にとってリスクがある。ネット企業は、そもそもSPAなどやったことがないので、マーチャンダイジング、在庫レスの手法など知りもしない。しかし、3大ネット企業、Amazon、楽天、Zホールディングスの軍門に下ったアパレル企業の販売データは、すべてビッグデータとして、これらネット企業がすべて自由に閲覧できることになる。

 過去、私はZOZOがそれをやると述べたが、流石に日本という閉鎖国家では村八分にある可能性もあり、それは禁じ手となり、デニムとTシャツしかつくれなかった。本来、ZOZOには山のようなファッションデータ、価格データ、顧客データがあるわけだから、中国sheinのようなビジネスができたはずだ。要はビッグデータを活用し、最も売れている商品と価格でPBを供給すれば良いのである。

 ZOZOは日本企業だったし、当時は前澤劇場が盛んにメディアにでていたので、こうしたことはできなかったようだ、しかし、外資のAmazonであれば「I don’t care. Who cares. This is competition」でやってしまう。ただし、同社のアパレル部門のヘッドクオータはアジアにあるので、日本の事情をわかっているとは言い難い。しっかりしたマネジメントがアマゾンジャパンに入れば、Amazonがビッグデータを活用したデジタルSPAと、Amazon PBによる最先端の服を供給することになるだろう。また、Amazonがやれば楽天も追随することになる。

 これに対して、Zホールディングス傘下のZOZOは、先々週に紹介したスタートアップD2Cのインキュベートを加速させ、次世代のインキュベーションプラットフォームになると考えるのが自然だ。実際、Z世代を中心に、アパレルの役者は交代している。彼らは、sheinのケースからもわかるように、正しい戦略と投資を行えば世界規模のモンスターになる可能性もある。もはや投資会社と化した三菱商事や伊藤忠商事も、この領域に参画するだろう。彼らは、ブランドや小売に出ようとしているが、小売の世界は相当難しく、これまで商社が小売を手掛けて成功した事例は相当少ない。インキュベーションに舵取りを変えてゆくと考えるのが自然だ。

 こうした中、オールドエコノミーと化した、旧来型アパレルの対抗戦略とはいかなるものかは次週に書いてゆきたいと思う。

 

早くも3刷!河合拓氏の新刊
「生き残るアパレル 死ぬアパレル」好評発売中!

アパレル、小売、企業再建に携わる人の新しい教科書!購入は下記リンクから。

 

プロフィール

河合 拓(事業再生コンサルタント/ターンアラウンドマネージャー)

ブランド再生、マーケティング戦略など実績多数。国内外のプライベートエクイティファンドに対しての投資アドバイザリ業務、事業評価(ビジネスデューディリジェンス)、事業提携交渉支援、M&A戦略、製品市場戦略など経験豊富。百貨店向けプライベートブランド開発では同社のPBを最高益につなげ、大手レストランチェーン、GMS再生などの実績も多数。東証一部上場企業の社外取締役(~2016年5月まで)

1 2 3 4

記事執筆者

河合 拓 / 株式会社FRI & Company ltd.. 代表

株式会社FRI & Company ltd..代表 Arthur D Little Japan, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナー等、世界企業のマネジメントを歴任。大手通販 (株)スクロール(東証一部上場)の社外取締役 (2016年5月まで)。The longreachgroup(投資ファンド)のマネジメントアドバイザを経て、最近はスタートアップ企業のIPO支援、DX戦略などアパレル産業以外に業務は拡大。会社のヴィジョンは小さな総合病院

著作:アパレル三部作「ブランドで競争する技術」「生き残るアパレル死ぬアパレル」「知らなきゃいけないアパレルの話」。メディア出演:「クローズアップ現代」「ABEMA TV」「海外向け衛星放送Bizbuzz Japan」「テレビ広島」「NHKニュース」。経済産業省有識者会議に出席し産業政策を提言。デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言

筆者へのコンタクト

関連記事ランキング

関連キーワードの記事を探す

© 2024 by Diamond Retail Media

興味のあるジャンルや業態を選択いただければ
DCSオンライントップページにおすすめの記事が表示されます。

ジャンル
業態