アパレル産業の「新世界」 生存方法はアマゾン・楽天・ヤフーの傘下入りかデジタル企業への変革だけ

河合 拓
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世界的に非効率な小売業
デジタル企業にならねば生き残れない

 日本の流通、小売企業は人材ビジネスだ、というが、それは間違っている。単に生産性が低いだけだ。経済産業省の企業活動基本調査によれば、18年の小売業の労働生産性は、製造業の1197万円/人に対して、497万円/人と半分以下であり、世界と比較しても、「産業別労働生産性の国際比較:水準とダイナミクス」によれば、米国の32%、ドイツの33%、フランスの39%余剰人員の塊のような産業なのである。

 私は、拙著【ブランドで競争する技術】の前書きで、銀座のコーヒーは家賃が高いからでなく、銀座という街には高額のお金を払う人がいるからだ、と説いた。業績不振企業は、自社の固定費を賄うため商品を高額にし、「高いお金を出しても買ってくれる人がいる」と。日本でも数%以下のセグメントに大多数が集中しつぶしあいを行って、マスボリュームはユニクロ含めたグローバルSPAのやりたい放題となっている。こうした状況がこれ以上続くこともなく、GDP3倍という借金を背負った日本に、これ以上補助金を期待しても無理だろう。そうなれば、生産性の高いネット企業のプラットフォームに、これら、非生産性の塊を集約し産業効率を大きく高めてゆくことは必然なのだ。だめな産業とはいえ、9兆もある産業はそうそうない。

米アマゾンのアプリのロゴ
(2021年 ロイター/Dado Ruvic)

 私が、Amazonマーケットプレイス、楽天マーケットプレイス、そして、ZOZOとヤフー(ソフトバンク陣営)による囲い込み、そして、彼らを追いかけたいマガシーク率いるNTTドコモなどが、2万社あるアパレル企業の集約化を行うだろう。結果、日本のアパレル市場は、Amazon、楽天、ソフトバンク・ヤフー(ZOZO)の3つの大きなマーケットプレイスができあがることになる可能性が高い。ただし、アパレル産業は素人が下手に手を出すと火傷をするほど独特だから、しっかりした戦略と知見のあるコンサルタントなどと組むことが前提だろう。

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