若い客層を開拓する新フォーマットを開発 「新しいベイシア始まる」 ベイシア代表取締役社長 橋本 浩英

聞き手:阿部 幸治 (ダイヤモンド・チェーンストア編集長)
構成:大宮 弓絵 (ダイヤモンド・チェーンストア 副編集長)
Pocket

EDLP商品の数は1.5倍、地域最安値を追求

──若い世代に訴えかける売場づくり、デザインの一方で、ベイシアの代名詞と言える低価格政策も強めています。店内では「激安」と銘打った商品が多く見られますね。

橋本 勝浦店は、EDLP(エブリデー・ロープライス)の価格戦略をさらに推進するための実験に取り組んだ店でもあります。EDLPで販売する商品は従来のSuCの1.5倍に増やしました。価格も、競合店調査により他社の追随を許さない低価格に設定しています。おそらく千葉県の外房エリアにあるどの店舗よりも安いでしょう。今後の売上動向から購買頻度の高い商品を見極めて、EDLPに設定する商品の構成をさらにブラッシュアップしていきます。

──大きく圧縮した非食品売場では、カジュアルウエア専門店「everywear(エブリウェア)」を導入し、核売場としています。

橋本 エブリウェアは、ベイシアのSPA(製造小売)型の衣料専門店で、17年9月、当社のSMが入る近隣型ショッピングセンターのなかに1号店をオープンしました。とくに、ストレッチ機能とサイズ・色のバリエーションの幅を訴求した、デニムやチノパンツなどのボトムスが支持を得ています。SuCにエブリウェアを導入するのは初の取り組みです。

 1号店の売場面積は約1000㎡ですが、勝浦店は靴と服飾雑貨を絞り込んで約800㎡で展開しています。今後、SuCの新規出店や改装の際は、衣料品売場にはエブリウェアを導入する計画です。

ブロガーを店舗に招き、若い世代に情報を発信

──勝浦店ではこれまでと異なる販促にも取り組んでいますね。

橋本 若い世代に向けた販促を積極的に進めていきます。発信力のあるブロガーさんを店舗に招き、ブログやSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を通じて当店の魅力を発信してもらう取り組みも行っています。

 これまでは店内での写真撮影を禁止していましたが、思い切って撮影していただいてよいことにしました。するとSNSにアップされた勝浦店の写真を見たという若い世代のお客さまが多く来店されました。

 勝浦市は、夏場の海水浴などを目的に年間110万人以上の観光客が訪れます。観光で訪れたお客さまにも勝浦店を利用していただき、SNSを通じてベイシアの新しいSuCモデルを全国に発信してもらいたいと考えています。

──今後の出店計画を教えてください。

橋本 勝浦店では、新しいSuCモデルとして取り組みきれていないことがまだあります。今後、勝浦店での取り組みをさらに発展させて、早期にプロトタイプと言えるような店をつくりたいと考えています。

 19年2月期は、SuCの勝浦店のほか4店舗を出店する計画です。この4店舗を含めて、これから新規出店する店舗では勝浦店同様に即食商品を拡充し、花カフェを導入した食品ゾーンを展開する予定です。

 同時に既存店のSuCでも売場面積の適正化を進めます。改装により商品回転率の低い非食品の売場は削減し、そのぶんの売場に100円ショップなどの利便性の高いテナントを誘致して集客力アップを図ります。

 勝浦店は、ベイシアとして今後の店づくりの方向性をかたちにした店舗と言えます。テレビCMでは「新しいベイシア始まる」というキャッチフレーズを打ち出しました。それを見たお客さまから多くの応援の言葉をいただき、従業員の大きなモチベーションになっています。こうしたお客さまの声を今後も吸収し、常に新たなチャレンジを続けて進化していきたいと考えています。

1 2

聞き手

阿部 幸治 / ダイヤモンド・チェーンストア編集長

マーケティング会社で商品リニューアルプランを担当後、現ダイヤモンド・リテイルメディア入社。2011年よりダイヤモンド・ホームセンター編集長。18年よりダイヤモンド・チェーンストア編集長(現任)。19年よりダイヤモンド・チェーンストアオンライン編集長を兼務。マーケティング、海外情報、業態別の戦略等に精通。座右の銘は「初めて見た小売店は、取材依頼する」。マサチューセッツ州立大学経営管理修士(MBA)。趣味はNBA鑑賞と筋トレ

構成

大宮 弓絵 / ダイヤモンド・チェーンストア 副編集長

1986年生まれ。福井県芦原温泉出身。同志社女子大学卒業後、東海地方のケーブルテレビ局でキャスターとして勤務。その後、『ダイヤモンド・チェーンストア』の編集記者に転身。最近の担当特集は、コンビニ、生協・食品EC、物流など。ウェビナーや業界イベントの司会、コーディネーターも務める。2022年より食品小売業界の優れたサステナビリティ施策を表彰する「サステナブル・リテイリング表彰」を立ち上げるなど、情報を通じて業界の活性化に貢献することをめざす。グロービス経営大学院 経営学修士

関連記事ランキング

関連キーワードの記事を探す

© 2024 by Diamond Retail Media

興味のあるジャンルや業態を選択いただければ
DCSオンライントップページにおすすめの記事が表示されます。

ジャンル
業態