「100年視野に働き甲斐ある会社めざす」5期連続で増収増益の平和堂=夏原平和社長

聞き手:千田 直哉 (編集局 局長)
構成:森本 守人 (サテライトスコープ代表)
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トータルで提案できるGMS

──総合スーパー(GMS)が不振といわれています。平和堂は大型店「アル・プラザ」はじめ多くのGMSを展開していますが、活性化のための考え方、施策を教えてください。

夏平 かつて当社はGMSを中心に店舗網を広げましたが、現在はSMを主力とする出店政策に転換しています。とはいえ、16年2月期第3四半期末時点では、147店のうち65店がGMSです。現在、GMS活性化に向け実施しているのは、会員カード「HOPカード」を通じて得られた販売データの活用です。かつてはどの店もほぼ同じ品揃えをしていましたが、データ分析に基づきマーケットやお客さまの買い物動向に合わせた商品構成へと切り替えようとしています。接客にも力を入れ、付加価値商品を伝える取り組みも強化しています。例えば布団は、社員やパートタイマーがメーカーの工場を見学するなどし、商品知識を十分に持ったうえでお客さまと接することで、高質な商品がよく売れている店もあります。

 今後、GMSのモデル店づくりも計画しています。「アル・プラザ」タイプの店舗で衣料品や住居関連売場を大きく見直し、新たな品揃え、売り方にチャレンジします。なんとか結果に結びつけ、既存店にも波及できればと考えています。

──GMSは改善すべき点ばかりではなく、独自の魅力、競争力もありそうです。

夏平 その通りです。たとえば、1店舗当たりの食品の売上をみますと、SMは最大でも30億円ほどですが、GMSの場合は40億~50億円を売る店もあります。今年の節分では恵方巻の販売が1万本を超えたのは4店ありましたが、いずれもGMSの「アル・プラザ」でした。食品だけでなく、衣料や住居関連商品も扱っているため、それらをトータルで提案できるのがGMSの強みです。いずれにせよ食品で集客したお客さまにいかに非食品の売場へ立ち寄ってもらえるようにするかが大きなテーマです。

宿泊施設を備える新本部

──さて、平和堂の創業は1957年で、来年には還暦の60周年を迎えます。

夏平 57年3月1日、滋賀県の城下町、彦根市で「靴とカバンの店・平和堂」として創業、来年は記念すべき年となります。実は、昨年1月、さらなる将来を見越し、「100年企業」をめざす方針を発表、新たな取り組みをスタートさせています。その一環で制定したのは、「平和堂グループ憲章」です。具体的には「全従業員の物心両面の幸福(しあわせ)を追求するとともに、お客さまと地域社会に貢献しつづける企業となる」というものです。

 社員にとり、会社は人生の時間をもっとも多くかける場所で、皆、人生と生活の質を向上させようと努力しています。これを受け、当社では社員の「物心両面の幸福」の追求が大切だと考え、昨年は人事制度を見直したほか、人間力を磨く勉強会の開催、改装時の店舗後方施設(社員食堂、トイレ)の改修などを実施しました。

──新本部の建設も進んでいます。

夏平 年内には完成、来年3月1日の創業記念日までには、本部機能をすべて移転する計画です。実はこの事業は、60周年だけでなくさらなる将来も視野に入れています。計画をスタートさせたのは2014年ですが、その年に新卒入社した社員が、定年の65歳となる2057年、当社は100周年を迎えます。その時も、働き甲斐のある、健全な会社であるための象徴という思いも新本部に込めています。新本部は、50年以上の耐久性を持つ3階建て施設で、他部門と情報共有しやすいよう1フロアを広くとりました。さらに新本部には、「100年企業」をめざすため、従来にない機能も付加します。そのひとつは研修センターで、従業員教育、各種会議も開きます。

 宿泊施設を併設するのも、新本部の大きな特徴のひとつ。ツインルームを17室備え、一度に30人以上が泊まれます。会議の後、ゆっくりとコミュニケーションを図る場があることで、よりお互いを理解できるようにもなるはずです。「100年企業」になるためには、何より社員が一体感を持ち仕事をすることが大事だと考えているのです。

──創業100周年を視野に、多くの取り組み、プロジェクトが進行しています。

夏平 14年12月には「経営者育成塾」も開講しました。私が塾長となり、「会社の理念」「創業者の思い」を伝えるほか、外部講師を招き、「先哲に学ぶ生き方」をテーマに講演してもらうなど、次代の平和堂を担う人材を育成しようとしています。流通業界の競争は激化していますが、常に長期的な視点を持ち、全従業員が働き甲斐を持てる企業でありつづけられるよう、今後も努力を続けていきます。

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聞き手

千田 直哉 / 株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア 編集局 局長

東京都生まれ。1992年ダイヤモンド・フリードマン社(現:ダイヤモンド・リテイルメディア)入社。『チェーンストアエイジ』誌編集記者、『ゼネラルマーチャンダイザー』誌副編集長、『ダイヤモンド ホームセンター』誌編集長を経て、2008年、『チェーンストアエイジ』誌編集長就任。2015年、『ダイヤモンド・ドラッグストア』誌編集長(兼任)就任。2016年、編集局局長就任(現任)。現在に至る。
※2015年4月、『チェーンストアエイジ』誌は『ダイヤモンド・チェーンストア』誌に誌名を変更。

構成

森本 守人 / サテライトスコープ代表

 京都市出身。大手食品メーカーの営業マンとして社会人デビューを果たした後、パン職人、ミュージシャン、会社役員などを経てフリーの文筆家となる。「競争力を生む戦略、組織」をテーマに、流通、製造など、おもにビジネス分野を取材。文筆業以外では政府公認カメラマンとしてゴルバチョフ氏を撮影する。サテライトスコープ代表。「当コーナーは、京都の魅力を体験型レポートで発信します」。

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