追悼 宗像守 享年63歳 DgS業界の牽引役、逝く

ダイヤモンド・ドラッグストア編集部
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 6月26日、日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)事務総長の宗像守氏が死去した。享年63歳だった。宗像氏は1985年9月に日本リテイル研究所を設立し、小売業のコンサルティング活動をスタート。95年9月からはドラッグストアMD研究会を主宰。99年6月のJACDS設立に尽力した。2002年の経済産業省「商業統計」、07年総務省「日本標準産業分類」にドラッグストア(DgS)業態を組み入れた立役者で、経済産業省、厚生労働省、農林水産省等の各種委員会のオブザーバーを数多く務めた。本稿ではDgS業界人のお別れの言葉を抄録する。

故 宗像 守氏を偲んで

日本チェーンドラッグストア協会 会長 青木桂生
(クスリのアオキ取締役会長)

日本チェーンドラッグストア協会
日本チェーンドラッグストア協会 会長
青木桂生(クスリのアオキ取締役会長)

 6月26日に急逝されました故・宗像守当協会事務総長に哀悼の意を表しますとともに、謹んでご冥福をお祈り申し上げます。「食道がんの治療に入るが、秋には復帰する」とお聞きした矢先でしたので、訃報に接したときは「まさか』と大きな衝撃が走りました。

 皆さまご存知のとおり、故人はJACDSのかけがえのない基幹エンジンでした。協会の創設に奔走され、設立後は事務総長として組織の礎を築くとともに、協会運営や事業を力強く牽引されました。彼の存在なくして今日のチェーンDgS産業界と、JACDSの発展はなかったに違いありません。

 その功績は紙幅に余りますが、とりわけ「薬剤師不在問題」にかかる薬事法改正や、「調剤ポイント付与問題」の解決は、彼でなければ為し得なかった最大の偉勲と申せましょう。行政当局との難しい交渉・調整において、一歩も引き下がることなく、理路整然と熱弁をふるわれる雄姿を昨日のことのように覚えております。また、近くは「街の健康ハブステーション」構想を提唱され、チェーンDgSのめざすべき姿をお示しくださったことにも深く感謝申し上げたいと思います。

 JACDS創立20周年を目前に志半ばで斃たおれられた無念さは察するに余りあります。協会にとっても測り知れない痛手ではありますが、立ち止まるわけにはまいりません。哀しみを乗り越え、一刻も早く態勢を再構集して、巡航運営を取り戻すことが直近の最重要課題だと認識しております。

 また、故人が常々口にしておられた「社会への貢献」「10兆円産業への挑戦」にまい進するとともに、「街の健康ハブステーション」構想の実現や、「全国保健医療情報ネットワーク」の2020年度本格稼働に向け万全を期すことが、ご遺志に報いる道だと考えております。

どうぞ安らかに、そしてありがとう

日本チェーンドラッグストア協会名誉会長 松本南海雄
(マツモトキヨシホールディングス代表取締役会長)

日本チェーンドラッグストア協会
日本チェーンドラッグストア協会名誉会長 
松本南海雄(マツモトキヨシホールディングス代表取締役会長)

 宗像守さまの訃報に接し、心より哀悼の誠をささげます。

 ご家族さま、ご親族さまには謹んでお悔やみ申し上げます。

 私が初めて宗像さまとお会いしたのは、DgSが成長期に入り、薬剤師不在問題など解決しなければならない多くの課題を抱えていた1998年頃でした。宗像さまとお会いし議論を重ねるうちに、これらは一企業の経営者だけでは何ともし難いものであり、多くの仲間を集い、大きな流れをつくる必要がある、さらには、高齢化に向かう日本において、企業経営という小さな考え方ではなく、DgS経営者が一堂に会し、業界をまとめ、1つの方向に進むことが重要との認識が一致しました。

 宗像さまが今後のDgSのあるべき姿、日本の発展に果たすべく役割を経営コンサルタントとしての知見を生かし、その必要性、重要性を説いていただいたことで、99年6月のJACDS設立にたどり着くことができました。

 翌年には第1回Japanドラッグストアショーを開催し5万人を超える来場者を迎え、今年は第18回のドラッグストアショーとなり、来場者規模も13万人に成長しました。50年ぶりの薬事法改正、セルフメディケーションの推進など、宗像さまの志が、日本の医療制度改革に貢献されたことは言うまでもありません。

 先日、ご病気が発見されたとお聞きし大変心配しておりましたが、必ずや復帰され、協会設立20周年事業の陣頭指揮を執っていただけるものと期待しておりましたが、ご自身の誕生日を目前に他界されたことは、本当に残念でなりません。

 宗像さまのお人柄と強い意志により、ここまで育てていただいたDgS業界をさらに発展させるため、私も微力ながら努めさせていただきます。どうぞ安らかに、そしてありがとうございました。

宗像さんは“まず人のため”、自分のことは最後の入でした

日本チェーンドラッグストア協会執行委員長 根津孝一
(ぱぱす代表取締役会長)

日本チェーンドラッグストア協会
日本チェーンドラッグストア協会執行委員長 
根津孝一(ぱぱす代表取締役会長)

 「お互いしつこく生きていきましょうね!」と宗像さんが検査入院をした6月4日にメールをくれました。それからわずか1カ月、こんな突然の逝き方があるのでしょうか。いまだに信じられません。実感がわかないのです。これが今の私の正直な気持ちです。

 何故、こんな突然に……。思えば、宗像さんの生き方は、“自分のことは最後に”でした。まず世のため、協会のため、会社のため、社員のため、家族のため、そして最後に自分です。これこそがこんなにも早く逝ってしまった原因だと……。だからこそ、この20年間の協会活動での実績が宗像さんの力で残ったのです。

 登録販売者をつくり、医薬品分類をつくり、インターネット販売のルールの調整をし、ポイント問題を解決し、機能性食品の推進、検体測定、薬局二重申請問題の解消等々、その実績は数えきれないほどです。

 自身の体のことはそっちのけで毎日ハードスケジュールをこなし、時おり徹夜仕事もしていました。そして、人付き合いもよく、わずかに空いた時間も惜しみなく過ごしていました。

 宗像さんの20年間は濃密すぎたのかもしれません。できることなら仕事をスローダウンしてあと10年生きてほしかった! “まず人のため”という信条がこんなにも早く逝ってしまった原因かと思うととても残念です。

 しかし、その信条は残った私たちの心の中に残っています。私たちはそのDNAを大切に、少しでも近づけるよう活動していきます。

 素晴らしい生き方を残してくれて本当に、本当にありがとうございました。

藍染ネクタイを贈った思い出

日本チェーンドラッグストア協会副会長(会長代行) 池野隆光
(ウエルシアホールディングス代表取締役会長)

日本チェーンドラッグストア協会
日本チェーンドラッグストア協会副会長(会長代行) 
池野隆光(ウエルシアホールディングス代表取締役会長)

 宗像先生との別れがこんなに突然やってくるとは予想だにしませんでした。

 余人をもって代えがたき方を突然失い、個人的にも業界としても、支柱を失ったことでの損失の大きさを感じています。

 亡くなる10日程前の6月15日のメールが最後のメールとなりました。それは「18日から昭和大学医学部に転院すること、留守中事務局のことをよろしく。元気になったら恩返しします」……等々記されていました。

 定例記者会についても「今起きている事実を話して記者の皆さんの審判を受けることが開かれた運営につながる」と話されました。記者会のあと盃を重ねるときの先生の熱弁笑顔は忘れることができません。

 先生に最初に出会ったのは2004年でした。DgSの組織化について話を聞きました。あるとき「このままでは協会はダメになる」という危機的な状況を話されました。宗像先生は疲労困憊しておられました。

 私は湯布院の藍染ネクタイを渡し「湯布院の藍染は何百年も続いた染物です。歴史をつくるのは壊すより難しいですよ。このネクタイを締めて思いを伝えてください」と申し上げたら、顔がぱーっと明るくなりました。後日談ですが「いやー嬉しかった」とおっしゃいました。

 時には大勢の前に立ちはだかり、時には個人的な悩みに本気で取り祖んで相談に乗っていただけるまさに人間そのものの方でありました。

 感謝してもしきれませんが、この業界発展のため、先生の志を引き継ぎ、さらに大きく成長させることをお約束いたします。合掌。

協会5原則を噛み締めながら、思いをさらに進展させる

日本チェーンドラッグストア協会事務総長 日本ヘルスケア協会会長 今西信幸

日本チェーンドラッグストア協会
日本チェーンドラッグストア協会事務総長 日本ヘルスケア協会会長 
今西信幸

 宗像先生が体調を崩されたということは6月に入ってから聞いていましたが、こんなにも早くお別れの日が来るとはだれも予想できなかったことだと思っています。故人は薬業界にあって、消費者、患者視点でも発言し、行動できる稀有な人でした。

 故人が20年前、協会設立の生みの苦しみの際、時に心が折れそうなとき、ふと水がわくように出てきた言葉が、JACDSの活動5原則だったと聞いています。

 それは①民主的な組織と運営を貫くこと、②議論の場であること、③会員は協会の目的達成のために力を合わせること、④正義を貫くこと、そして⑤志高き人々の集団たれ――というものです。

 故人はこの協会5原則をもって以降、一点の迷いもなく、DgS業界の発展のために20年の長きにわたり協会活動を牽引。心血を注いで育んでこられました。本当にありがとうございます。

 私は図らずも宗像さんの事務総長の任を引き継ぐことになりました。ここに故人の在りし日の遺影の前で、協会5原則を噛み締めながら、私も迷うことなく、あなたの「DgSが予防・治療・介護の受け皿になる」という思いをさらに進展させることをお誓いし、心よりご冥福を祈って弔辞とさせていただきます。さようなら、宗像事務総長。どうぞ安らかにお眠りください。本当に、本当に、ありがとうございました。

日本チェーンドラッグストア協会
7月31日の「宗像守 お別れの会」の様子

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