ローソン、約400億円を投じてオーナーの複数店経営を増やす理由

松尾 友幸 (ダイヤモンド・チェーンストア 記者)
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27日、ローソン(東京都/竹増貞信社長)は「加盟店経営の安定に向けての新たな施策について」の記者発表を行った。人口減少が続くなか、フランチャイズ(FC)加盟店が1店舗だけで売上・利益を確保するのはますます難しくなると想定した同社は、1人のオーナーが複数店舗を経営することを推奨する。さらに、低利益の加盟店に対する金銭的支援を実施するほか、オーナーの休暇サポートなど加盟店支援に関するさまざまな制度を導入し、持続可能なビジネスモデルの構築をめざす考えだ。

ローソンの竹増貞信社長
ローソンの竹増貞信社長

単店経営では利益確保は困難

 ローソンが大規模な加盟店支援強化に至った背景には、加盟店の収益性低下がある。人口が減少するなか、売上の伸び悩みや慢性的な人手不足、経費の増加などで利益を確保することが困難になっている。とくに1店舗だけを運営する「単店経営」では、近隣への競合店出店などの影響を一身に受けることになり、複数店舗を運営する場合と比較すると経営上のリスクが高い。

 このような状況を受け、ローソンは以前から複数店経営の推進に取り組んできた。同社のFC店舗のうち、複数店を経営するオーナーの店舗数は2015年度の7392店舗から19年度は約9600店舗(見込み)と4年間で2000店舗以上も増加している。

 しかし、オーナー数そのものは全体の約58%にあたる約3700人が単店経営となっている。ローソンとしては、複数店経営による安定した運営体制と人材の有効活用により「加盟店によるマチのドミナント経営」をめざす考えだ。「複数店経営していれば、クルー(アルバイト)が都合に応じてほかの店舗のシフトに入るなど、人材を有効活用することができる。小さなエリアで柔軟な運営体制を構築したい」(竹増社長)。

複数店経営が実現した場合、業界最大の150万円の奨励金を支給

 今回発表した加盟店支援のための制度は203月から順次導入する予定だ。まずは短期的な戦略として、単店で経営が厳しい加盟店へのサポートを実施する。単店経営店舗のうち低利益の約1200店舗を対象に、1年間限定で月4万円を支給する。加えて、対象の加盟店が1年以内に複数店経営に移行した場合には月4万円の支援をさらに2年間延長し、奨励金として150万円を支給する。竹増社長によると、この金額は複数店経営への奨励金としては業界最大とのことだ。

 人材確保の面では、採用専用のコールセンターの設置や従業員募集のウェブサイト運営などを行う。加えて、従業員の研修や外国人従業員へのサポートなど、加盟店任せになっていた部分のあった教育面での支援も実施するほか、「オーナーサポート」制度を新たに導入。全国7拠点に専任の社員約100人を配置し、冠婚葬祭など急な用事でオーナーが休暇を取る際に本部から人材を派遣するシステムとなっている。そのほか、複数店経営をめざすオーナーに対して、これまで座学研修が中心だった店長の育成を本部社員(トレーナー)が直接店舗に出向いて指導するプログラムも用意した。

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記事執筆者

松尾 友幸 / ダイヤモンド・チェーンストア 記者

1992年1月、福岡県久留米市生まれ。翻訳会社勤務を経て、2019年4月、株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア入社。流通・小売の専門誌「ダイヤモンド・チェーンストア」編集部に所属。主に食品スーパーや総合スーパー、ディスカウントストアなど食品小売業の記者・編集者として記事の執筆・編集に携わる。趣味は旅行で、コロナ前は国内外問わずさまざまな場所を訪れている。学生時代はイタリア・トリノに約1年間留学していた。最近は体重の増加が気になっているが、運動する気にはなかなかなれない。

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