物流問題もフードロスも解決する!? ローソンの「冷凍おにぎり」が秘める可能性

松岡 瑛理
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ローソン(東京都/竹増貞信社長)は8月22日から11月20日までの3カ月間、東京都と福島県の計21店舗で「冷凍おにぎり」6アイテムの販売実験を行っている。コンビニエンスストアの代表的な売れ筋商材であるおにぎりを”冷凍化”することで、流通業界において喫緊の課題となっている物流効率化とフードロス削減を図るねらいだ。

定番のおにぎり6種類を「冷凍」で販売

ローソンが発売した「冷凍おにぎり」
ローソンが発売した「冷凍おにぎり」

 ローソンが今回「冷凍おにぎり」として発売したのは、おにぎりの定番メニューである「焼さけおにぎり」(税込268円)、「赤飯おこわおにぎり」(同149円)、「五目おこわにぎり」(同154円)、「鶏五目おにぎり」(同138円)、「胡麻さけおにぎり」(同138円)、「わかめごはんおにぎり」(同138円)の6種類。ベンダーの工場で製造後すぐに冷凍し、冷凍物流で店舗に納品している。パッケージや価格は通常の商品と変わらず、店内や家庭にある電子レンジで解凍することですぐ食べることができる。

 22年11月にローソンは、再生プラスチックを使用した買物かごの導入やエコバッグの販売など、サステナブルな施策を全面導入した環境配慮型店舗「グリーンローソン」(東京都豊島区)を出店。同店では「冷凍弁当」を販売し注目を集めたが、今回、冷凍のラインアップをおにぎりに広げた。

 ローソンが弁当やおにぎりの”冷凍化”を試行する背景にあるのが、いわゆる「物流の2024年問題」だ。働き方改革関連法の制定によって、24年4月からドライバーの時間外労働時間の上限が年間で960時間以下に制限され、業界全体で労働力・輸送能力が不足する可能性が指摘されている。

 これまで弁当やおにぎりは、製造ベンダーが冷凍の半製品を解凍・調理し、常温・チルド配送で配送センターから店舗へと送り届ける手順を踏んでいた。そのため、加盟店の発注から売場に商品が並ぶまでに一定のリードタイムがかかっていた。

 しかし、冷凍食品であれば解凍のプロセスが必要なく、冷凍物流で配送センターや店舗に運ぶことができる。何より配送センターや店舗での保存・販売期間が長くなるため、配送回数を1~2回に抑えられ、店舗での廃棄ロスも減らすことができるなど、物流、店舗運営を含め持続可能なオペレーションを構築することが可能となる。 

 ちなみにローソンは「2024年問題」に鑑み、すでに22年12月から、1日3回行っていたチルド・低温商品の配送を2回に減らす試みを行っている。販売ボリュームの大きなおにぎりの冷凍化は、その取り組みを加速させるための大きなカギとなる。

消費者の”違和感”をおにぎりで解消する

 一方で、販売面での課題となっているのが消費者への認知・普及だ。

 ローソンが消費者に行った調査では、従来販売しているチルドの弁当と、グリーンローソンで投入した冷凍弁当との間で、美味しさの評価値は大きくは変わらなかった。しかし、グリーンローソンでは後者が前者の売上を大きく上回るような状況はみられないという。

 その理由について商品本部副部長の涌井和広氏は、「冷凍食品は主に家庭のストックとして購入されることが多く、買ってすぐに食べるというケースは少ない。『その場ですぐ食べるものを、なぜ冷凍の状態で買わなければならないのか』という違和感を持たれてしまっている」と分析する。

 そうした消費者の“違和感”を解消する第一歩として同社が注目したのが、「おにぎり」だった。おにぎりは弁当と比べて売上のボリュームが大きく、即食ニーズもより高い商材。それを冷凍販売することで、「冷凍おにぎりを買って、店頭や自宅で解凍してすぐに食べる」という消費スタイルを提案し、定着するかを見定めるねらいだ。

 店頭では冷凍おにぎりの存在をアピールするため、通常のおにぎりの売場に「冷凍おにぎり 冷凍食品売場にて取り扱い中」と記したPOPを掲出するなど販促にも力を入れている。

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