スギホールディングスの次の戦略 ココカラ破談も、M&Aは積極的に

ダイヤモンド・チェーンストア編集部
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相次ぐM&A(合併・買収)によりドラッグストア(DgS)業界のクリティカルマス(必要最低限の売上規模)がどんどん高まるなか、ココカラファイン(神奈川県/塚本厚志社長)との経営統合協議が実を結ばなかったスギホールディングス(愛知県/榊原栄一社長)は何を思うか。そして足元の好調な業績を維持しながら、いかにして業容の拡大を図るか、そこに生鮮食品の強化は選択肢としてあるのか。スギホールディングス副社長兼スギ薬局社長の杉浦克典氏に尋ねた(本稿は11月8日に公開したインタビューの後編です)。

新たに疾病予防サービスをスタート予定

スギホールディングス代表取締役副社長兼スギ薬局代表取締役社長  杉浦克典
すぎうら・かつのり●1978年生まれ、岐阜薬科大学薬学部卒。
2003年7月ジョンソン・エンド・ジョンソン入社、06年3月スギ薬局入社。
08年9月スギホールディングス執行役員内部統制室長、09年3月スギ薬局取締役、同年6月スギスマイル取締役。
11年3月スギ薬局常務取締役、14年3月スギスマイル代表取締役社長(現任)。17年3月、スギ薬局代表取締役社長就任(現任)。
18年5月より、スギホールディングス代表取締役副社長(現任)。

──現在主力としている調剤併設型DgSの基本的なフォーマットを教えてください。

杉浦 ヘルス&ビューティー、食品などを取り扱う物販部門については、十分な品揃えを提供しつつも、短時間で買いやすい・選びやすい売場を心がけています。そこで、当社では物販部門の売場面積250~300坪、そこに調剤部門などを併設するフォーマットを標準と考えています。最近の店舗は、都心型店舗や居抜き出店のケースを除いて、この物販+調剤のフォーマットが中心ですね。新店の半数くらいは、このフォーマットとなっています。

──将来的に、既存の調剤併設型DgSを進化させたり、あるいは新しいDgSの業態を開発したりすることは、検討していますか。

杉浦 もちろんです。DgSは既存の枠組みにとらわれる必要はありません。当社としては、調剤併設型DgSを、総合的なヘルスケアサポート機能も付加した「地域のヘルスケアステーション」に発展させたいと考えています。健康の維持・予防・未病の取り組みから、地域の医療機関や看護、介護の施設とも連携して、リアル拠点の有機的な連携とデジタルデータネットワークを構築し、行政とも連携して、さまざまなヘルスケアサービスを提供していくつもりです。その全体構想を「トータルヘルスケア戦略」と呼んでいます。

スギサポwalk
気軽に歩くことでスギ薬局のポイントがたまる「スギサポwalk」は、“エンタメ+ヘルスケア”という新たな基軸で、今年3月にリリース以来、ダウンロード数が40万を超えている

 今年から始めたスギサポシリーズ(eats、walk、deli)が稼働し始め、お陰様で多くのお客さまから好評をいただいていますが、とくに、気軽に歩くことでスギ薬局のポイントがたまる「スギサポwalk」は、“エンタメ+ヘルスケア”という新たな基軸で展開しており、今年3月にリリースして以降、順調にユーザーを増やし、ダウンロード数が40万を超えています。また、10月には、サントリーフーズ様とのコラボ企画である「特茶リズムウォーク」を実施していますが、想定以上の反響に驚いています。将来的には、「スギサポwalk」は予防医療を展開するプラットフォームとして機能させる計画ですが、まずは、多くのユーザー様に使っていただくことが重要だと思い、さまざまな企画を検討しているので、今後の展開に期待してください。

 そのほかにも、「メタボリスクレポート」という疾病予防サービスを、近くスタートする予定です。

──どのようなサービスですか。

杉浦 当社は、医学研究や統計データに基づき、健康診断のデータから将来の糖尿病など特定疾患の発症リスクを提示するレポートを開発しました(特許取得済み)。このレポートを活用して、たとえば、血糖値が高めだった場合、ほかの検査データも踏まえて、「このまま進行すれば、将来どのくらいの確率で糖尿病に移行するか、生活習慣を見直した場合の改善効果はどれくらいか」といった情報を提供します。

 たとえば、65歳になった時点での将来リスクを見せることによって、今までは単なる検査値等を見るだけであった、健康に対する無関心層に対して、健診数値を変えなければならないという行動変容を強く促すことにつながります。

 そのこともあって、健保組合様向けには、公的保険の事業である「特定健診・特定保健指導」とメタボリスクレポートを連携したサービスを展開し、現在、先進的な取り組みを行っている複数の健保組合様から徐々に受注をいただいている状況です。

 また、このレポートは当社店舗で一般の消費者向けにも展開する計画もあり、その場合は、メタボリスクレポートのデータに基づいて、管理栄養士が食事や運動について指導し、物販などにつなげる構想もあります。

──スギ薬局は店頭以外にも、在宅調剤の事業も手掛けています。

杉浦 現在、約1万1000人の在宅患者様のもとへ、店舗の薬剤師が月2回ほど訪問しています。そこでは、調剤だけではなく、物販も行っています。在宅で療養中の患者様やご家族から「ついでに、ほかの商品も持ってきてほしい」というニーズが根強いからです。

 当社の店舗では、約2万SKUのアイテムを取り扱っていますが、そのうち、ニーズの高い約400アイテムを選び、「おもてなし便」という名称でカタログ化しました。在宅の患者様への訪問販売はもちろん、入院されていたり、施設に入所されていたりしている患者様でも、電話やインターネットなど多チャネルで購入できるようにしています。
 カタログには、DgSでは取り扱っていない宅配専用のアイテムとして、在宅で療養されている方に必要とされる各種カテーテルや褥瘡保護用パッドなどの医療衛生材料も掲載しています。まだまだ発展途上ではありますが、今後は、それをさらに発展させ、在宅調剤領域の強みをさらに磨いていきたいと考えています。

──事業の幅がどんどん広がっていますね。

杉浦 ほかにも手掛けていることが数多くあり、正直時間が足りないです。デジタル活用・医療データ連携・インバウンドなどにも戦略的に取り組んでいます。スギサポシリーズや在宅向けの物販の売上規模は今のところ、店頭での物販や調剤に比べれば、まだわずかです。しかし、地域包括ケアシステムが広がりをみせるなか、将来的にこうした領域のニーズは拡大していくと予測しています。新たな事業の柱に育てたいですね。

スギ薬局外観
スギホールディングスは19年2月期末時点で1190店舗を展開する

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