実務を知らなくても価値はある!?いまアパレル企業改革にコンサルタントが必要になった理由
経営コンサルタント会社の好調具合がバブルの様相を呈しているという。学生人気ランキングの上位には外資コンサルの名前が連なり、また大手では1万人単位の人間がいても、一人もアベイラブル(コンサル用語で、稼働していない人員)はなく、どこも「これ以上、仕事は受けられない」状況のようだ。また、経営コンサルタントなど絶対に活用しなかったアパレル業界でも、ファーストリテイリングを筆頭に堂々とコンサル会社との協業を発表し、コンサル活用が広がっているという報道もなされた。アパレル業界から「コンサルアレルギー」は消えていったようだ。かくいう私も、自著2作目となる『生き残るアパレル死ぬアパレル』で、コンサル不要論を展開した人間として状況が変わってきたことを感じており、「不要論」はあやまりだったと告白したい。今日は、私が分析した「コンサル活用論」と、その理由について述べたい。
世の中の変化に取り残されているアパレル企業
私が『生き残るアパレル死ぬアパレル』で、「コンサル不要論」を述べたのは3年前、新型コロナウイルスが日本列島を襲う前のことだった。私は、業務の実態を知らない新卒を大量に雇い、単なるレポートを置いて「後はよろしく頼む」といって立ち去るコンサルタントを批判してきた。
しかし、三冊目『知らなきゃいけないアパレルの話』(ダイヤモンド社)を9月8日に発刊してまもなく、金融機関から勉強会の依頼をいくつかいただき、また、TVでのコメントや執筆の依頼も来て、その反響に驚いている。本書では、私のアパレル本の最後の書籍と覚悟し、アパレル業界の実態の裏まで私が見聞きしたことを赤裸々に語り、同時に、私自身の置かれている立場も隠すことなく書き記した。
今、世の中は恐ろしいほどのスピードで変化している。特に、コンサルタントに相談が来る話は、ほとんどがデジタルについてだ。
デジタル技術の進化は日進月歩で、例えばPLMでさえ、再三私が指摘している「シーイン」の取り組みの前では古ぼけて見えるほどだ。世界では、日本のそれとは違う「D2C」により、サプライチェーンという概念さえ消滅し、ビッグデータから工場直販で世界中に商品をばらまいている企業が2兆円を突破するほど成長しているのだ。しかし、産業界はこうしたニューカマーが出現した衝撃の本質的意味を理解していないようだ。いわく「その話は聞いた、新しい話はないか」と他人事になっている。
また、これからの競争優位は顧客のデータの質と量、さらに、その解析技術であるということを説明しても、全く耳を貸さない企業もあった。AIに関しても、未だに需要予測以上の発想を持たず、あちこちでAI万能論がはびこっている。しかし、論理的に考えてもらいたい。
需要予測が使えないのは、(日本政府のバラマキ行政によるゾンビ企業の量産から発生する) 毎年需要の倍(=200%)の供給過多という信じられないような不良在庫増産のメカニズムによるゴミと地球資源の無駄遣い、そしてその供給過多による潰し合いが原因だからだ。こんな統計はあちこちにでているし、最近では、有識者やコンサルがみな言いだした。
当たり前だが、人が必要としている2倍の量の商品が毎年製造されている状態で、需要予測がそもそも的外れだ。こんなことは大学生でも分かることなのだが、日本の政策を決めているキーパーソンさえ、いまだに「AI=需要予測が10%プロパー消化率を改善した」など言っている。
ビッグデータの分析活用や、KPIを商品ベースから顧客ベースのものへの変更―― このようにバリューチェーン全体のデジタル化の論が立った今だからこそ、AIが活躍する場がようやく出てきたのだが、それさえ分かっていない。
まずは日本全体の供給量を50%以下に減らすこと、または、論理的に考えれば、成長著しいアジアに出る手助けをすることこそ産業政策の根幹だと私は思う。だが、驚くことに「自然由来の素材を開発したから大丈夫」など、年18億枚の過剰供給を肯定し、「サステナファッションだ」などと呼び、供給過剰を前提にSDGs対応だと考えている人も多い。
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