nanacoのApple Pay対応でセブン&アイが得られる2つの果実と課題とは

棚橋慶次
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Apple PayとセブンアイのDX戦略

 セブンアイは中期経営計画の中でDX(デジタル変革)を重要戦略の1つとして掲げている。

 目的の1つが顧客基盤の構築だ。GMSやCVSでは、今までPOSによる販売情報(いつ・どこで・何を)をもとに売れ筋・死に筋を把握、商品開発や店舗陳列に役立て、売上増につなげてきた。一方で、POS情報だけでCRM(顧客関係管理)の実現は不可能だ。「誰が」買ったかの情報が欠けているからだ。
 だからこそカードや電子マネーによるポイントサービス等で顧客囲い込みを測るわけだが、自前の決済サービスだけでは普及に限界がある。だからこそ利用者拡大をめざし、世界的な電子決済プラットフォーマーであるAppleとの提携を決めたわけだ。現時点でAppleを利用した決済は年間ランレートベース(直近実績値の傾向がそのまま続くと仮定した数値)で150億件に達する予定で、これは世界シェアの5%に相当する。   AppleのCEOのティムクック氏は、今後5年間に10%まで伸びると予測している。

 生産性の向上にも、Apple Payは大きく寄与する。ここ数年、CVSの人手不足は慢性化している。人手不足解消・生産性向上の決め手として期待されているのが、お客自身のスマートフォンで会計を完了する「スマホレジ」だ。電子マネーが浸透すれば、スマホレジのさらなる導入拡大も視野に入ってくる。現金の取り扱いがなくなれば、スタッフの業務負荷も大きく軽減される。

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