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2017年8月24日

独自のアイディアで市場優位を獲得する
成功する“あの小売”のデータ活用術
デジタルデータの可能性を拡げる、新たな価値の創出へ

小売業のデジタル戦略トレンド
~加速する小売ビジネスのデータ活用~

顧客を中心としたデータ活用へのシフトが活発化


ダイヤモンド・チェーンストア誌 および ダイヤモンド・ドラッグストア誌編集長 下田 健司

 

オムニチャネル化を経て新たな段階へ

ダイヤモンド・チェーンストア誌 および ダイヤモンド・ドラッグストア誌編集長 下田 健司

 2000年前後から流通業界においても、IT導入やデジタルの活用がはじまった。業務の効率化、省力化という側面と、販売戦略および顧客とのコミュニケーションの活性化という2つの側面を目的に、進化・活発化してきた。そのなかで、2011年に全米小売業協会がオムニチャネルに関するレポートを発表。日本でも注目を集め、オムニチャネル化への積極的な取り組みがはじまった。

 

 オムニチャネルの象徴的な動きとしては、2015年のセブン&アイ・ホールディングスのオムニチャネル戦略が挙げられる。各グループを一つのECサイトに統合した「オムニ7」の展開である。1年が経過した昨年、その効果が見えにくいということから、ECサイトへの注力から顧客中心の「一人ひとりを捉えるきめ細かなサービス」への変換がはじまっている。スマートフォンとSNSの普及により、消費者の情報入手や購買行動の変化・多様化への対応が求められてきている。

 

 2013年頃から、首都圏の食品スーパーであるライフやヤオコー、マルエツなどが、自社の会員カードの導入を積極的に展開。そこから得られる顧客データを分析し、活用する取り組みを積極的に推進している。これも、顧客購買行動に注目した動きである。

 

 デジタルの新技術の活用としては、RFIDやAIが挙げられる。RFIDは、ユニクロの決済利用やビームスの棚卸、セブン-イレブンの納品検品など、作業の簡略化や効率化への施策となっている。AIは、PDCAの高速化であり、アスクルでは、配送システムに導入して最適な配送ルートの構築に利用している。紳士服のはるやまでは、顧客に合わせたDM作成のために、顧客ごとに求められる商品をセグメントして掲載するヒット率の高いDMづくりに利用している。

 

 このように、チャネルありき、データありきではなく、それらをどのように活用していくかという新しい段階に入っているといえるのではないだろうか。

 

企業アンケートから見えてくるIT・デジタルの課題

 弊社が発行する「ダイヤモンド・チェーンストア」誌で、2015年に実施した小売業売上高ランキングの上位200社を対象とした「IT・デジタル活用動向調査」がある。

 

 「情報システム上の重点課題は何か?」との質問には、7割以上の企業が「導入したITの社内での定着・活用促進」と回答。新しいシステムを導入しても、その後、社内に浸透させるのに時間がかかっている。

 

 「情報システム整備によって実現したいことは何か?」との質問の回答は、「顧客情報・販売情報の分析環境の改善」と「店舗の業務の省力化・効率化」が、ともに84%と圧倒的に高かった。「顧客情報・販売情報の分析環境の改善」は、毎回の調査でも関心が高まっており、IT・デジタル活用の主要課題となっている。「店舗業務の省力化・効率化」は、本部と店舗を問わず、人材不足が続いている流通業界においては、関心の高い重要課題となっている。

 

 「今後1~2年でIT新規導入・更新を検討するMD/販促関連システムは?」との質問に対しては、前回の32.4%から64%と上昇した「顧客情報/販売情報分析・活用システム」という回答が圧倒的に多かった。小売業には大量の販売データが蓄積されていることから、MDに積極的に活用したいという意識が強いということである。

 

 このアンケートからも、チャネルありきから、データの価値ある活用へとシフトしていきたいという意識が強まっていることが読み取れる。

 

顧客中心視点や顧客経験価値によるデジタル活用例

 顧客に選ばれる理由となる「新たな価値の創造」への取り組みとなる事例を紹介する。まず、「24時間パルコ」というキャッチフレーズとともに展開しているパルコの公式スマートフォンアプリ「POCKET PARCO」である。「POCKET PARCO」上での「Clip(クリップ)」やリアル店舗を訪れた「Check-in(チェックイン)」、館内のWi-Fi接続、登録クレジットカードによる商品購入で、独自ポイント「COIN(コイン)」が付与されるシステムである。顧客の行動にポイントを付与することで、来店頻度を上げ、継続的な買い上げを促進している。

 

 コープさっぽろでは、1998年からメーカーにPOSデータを全面的に開示し、「MD協議会」を実施している、2014年から「分析力養成講座」を開講するなど、メーカー向けのデータ分析の勉強を実施することで、一丸となったMD戦略を推進している。

 

 店舗や売場そのものが顧客とつながるメディアととらえ、コミュニケーションを図るという発想の「リテールメディア」を取り入れているのがトライアルである。その一つが、ショッピングカートにタブレットを取り付けた「タブレットカート」だ。特定の売場付近で、商品を使ったレシピ情報の提示やクーポン情報の提示などを行う販促施策であり、新しい取り組みとして注目を集めている。

 

 米国の小売業で、58四半期連続で前年同期比での増加を達成しているクローガーは、購買行動の把握だけでなく、顧客の深層心理まで追求するカスタマーサイエンスに着目した顧客理解を推進。これは、かつての商店街の精肉店などが、顧客の家族構成や嗜好まで把握して、商品提案をしていた買物体験の再現である。その結果、より高いロイヤルティが戻っているという。

 

 これらの活用事例は、「顧客経験価値=カスタマーエクスペリエンス (Customer Experience:CX)」の向上が目的となっている。

 

ECの動向と未来はシームレス化がキーワード

 ECの動向での注目は、食品ECである。日本でも展開をはじめた「Amazonフレッシュ」は、温度管理や鮮度へのこだわりを訴求している。さらに、セブン&アイ・ホールディングスもアスクルと業務提携を行い、生鮮食品のEC「IYフレッシュ(仮称)」を開始すると発表している。これらは、「食」のボーダーレス化であり、「いつでも、どこでも、日常使いのEC」という、第2世代ECといえる。

 

 スマートフォンとSNSの普及による購買行動の変化や多様化に応えるために、シームレス化とボーダーレス化が、今後の重要なキーワードになってくるだろう。

 

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