博報堂が取り組む「テーマ型」リテールメディア、第一弾はフェムテック領域

ダイヤモンド・リテイルメディア:高浦佑介 (ダイヤモンド・ホームセンター編集長)
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インフォマと売場を連動、番組と共に商品開発も構想

 「トーキョーツキイチMTG」は、番組を視聴してテーマを認知し、共感して理解を深めるだけでなく、自分ごと化した生活者が店舗に出向いて売場で商品を購入するまでの購買動線も設計しているのが特徴だ。テレビや公式SNS、ウェブサイトでは、番組で採り上げた商品を購入できる店舗を紹介し、店頭へ送客。イオンリテールやマツキヨココカラの対象店舗では、女性の様々な悩みに対応するフェムテック商品を品揃えし、番組と連動した企画販促を売場で展開している。

「トーキョーツキイチMTG」

テレビ番組と合わせてフェムテック関連商品をコーナー
大手小売チェーンとも連携し、テレビ番組と合わせてフェムテック関連商品をコーナー化する

 小売チェーン側からは「フェムテックの売場と『トーキョーツキイチMTG』とのコラボレーションに対してお客さまから反響があった」と好評だ。博報堂ショッパーマーケティング事業局(SMK局)の小島健嗣氏は「小売チェーンのフェムテックへの先進的な取り組みがメディアで採り上げられ、売場への送客につながるとともに、生活者に寄り添った便益性のある情報を伝えることで、フェムテックの認知度も高められている」と成果への手応えを語る。

 同番組はフェムテックに特化しているため、フェムテック商品を訴求するインフォマーシャルとの親和性が高い。SMK局の中田早紀氏は「バラエティやドラマなど、フェムテック商品と親和性の低い番組では、ザッピングでの離脱が起きやすく、商品の印象が残りづらいが、『トーキョーツキイチMTG』では、本編と一貫性のある世界観で商品をスムーズに訴求でき、商品の認知に効果的につなげられる」と説明する。

博報堂ショッパーマーケティング事業局の小島健嗣氏(左)と中田早紀氏(右)
博報堂ショッパーマーケティング事業局の小島健嗣氏(左)と中田早紀氏(右)

 同取り組みには、OTC医薬品を中心とするヘルスケア流通卸大手の大木ヘルスケアホールディングス(東京都)が23年4月に創設した完全子会社のLAUGHBASE(東京都)も参画している。

 LAUGHBASEは、女性特有の健康課題に社会全体が取り組むべき包括的なケアサポートを行う環境作りを「フェムケア(Female+Care)」という造語で定義しておりフェムケアに特化した情報発信と市場創造を担うプラットフォームとして、ブログやSNSで女性特有の心身の不調や悩みを採り上げたコンテンツを配信するとともに、その解決につながる商品の開発にも積極的に取り組む企業だ。

 「トーキョーツキイチMTG」では、番組とのインタラクティブなコミュニケーションを通じて生活者と広告主であるメーカーが新商品を共創し、協働する小売チェーンで先行発売することも構想している。

 24年1月には、第一弾商品としてデリケートゾーンケアブランド商品を発売する計画だ。番組で商品を採り上げ、公式YouTubeで商品の特徴や使用方法などを詳しく紹介する動画を配信。イオンリテールやマツキヨココカラの店舗では、商品を先行販売する。

ほかのテーマにも拡張できる可能性

 テーマ型リテールメディアは、世の中が関心を持ちやすい社会テーマを掲げて生活者から広く共感を獲得し、商品・サービスの販売を仕掛ける「戦略PR」の手法をリテールメディアに導入している点で斬新なモデルだ。

 一般的な広告モデルに比べて、価格以外の商品の価値や魅力を伝えやすくなる。また、社会テーマを掲げることで、テレビ局や小売チェーン、メーカーら、さまざまな企業を巻き込みやすくなるのも利点だ。

 小島氏は「テーマ型リテールメディアは拡張性のあるモデルだ」とし、「新たなヘルスケアやフードロスなど、幅広い社会テ

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ダイヤモンド・リテイルメディア

高浦佑介 / ダイヤモンド・ホームセンター編集長

2010年東京大学文学部卒業、12年同大学院修士課程(社会心理学)修了。14年ダイヤモンド・リテイルメディア入社。『ダイヤモンド・チェーンストア』誌の編集・記者を経て、19年4月より現職。

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