リテールメディアに本格参入、顧客接点の質を高めて選ばれる媒体へ=セブン-イレブン・ジャパン

Pocket

コンビニエンスストア(CVS)業界首位のセブン-イレブン・ジャパン(東京都/永松文彦社長:以下、セブン-イレブン)が、店舗やアプリなどの顧客接点を媒体に広告事業を展開する「リテールメディア」事業を本格化させている。2022年9月には専門の部署を立ち上げ、自社アプリでの広告配信を進めているほか、店舗へデジタルサイネージを設置した実証実験を行っている。国内最多店舗数を誇る小売業である同社がめざすリテールメディアとはいかなるものか、取材した。

自社アプリの成長を受け、専門の部署を設置

 先進的な米国ではすでに全体で6兆円にも上るといわれるリテールメディアの広告市場。このうち小売業のウォルマート(Walmart)がアマゾンに続いて2番目に多い3000億円近い広告収入を得るまでに成長しており、日本の小売業界関係者にも大きなインパクトを与えた。

 こうした影響もあって、すでにイオンリテール(千葉県)やトライアルカンパニー(福岡県)など、大手流通小売チェーンがリテールメディア事業に本格的に参入している。

 そうしたなか全国に2万1000店以上の店舗数を持つセブン-イレブンも大きく動き出している。22年3月、自社アプリ「セブン‐イレブンアプリ」上で、セブン-イレブンで商品を扱うメーカーの広告配信を実験的に開始。同年9月には、商品本部配下に専門部署の「リテールメディア推進部」を新設している。

セブンイレブン
全国に2万1000店以上を展開するセブン-イレブンも、リテールメディア事業に本格参入している

 大きなきっかけになったのが、「セブン‐イレブンアプリ」の成長だ。同アプリはいまや会員登録者数が1900万人を超えるまでに利用者を増やしている。

セブン-イレブン・ジャパン商品本部リテールメディア推進部総括マネジャーの杉浦克樹氏
商品本部リテールメディア推進部総括マネジャーの杉浦克樹氏

 商品本部リテールメディア推進部総括マネジャーの杉浦克樹氏は「自社アプリの成長によって顧客接点が増え、お客さまの購買行動が以前よりも見えるようになってきた。これを生かせばCVS事業に新たな価値を生み出せると強く感じるようになった」と説明する。実際、アプリやテレビCMを通じて健康系商品のプロモーションを打った際、健康志向が高いと思われる層を分析したところ、以前は月に1回程度の来店だった顧客が、月に数万円も商品を購入するまでにロイヤルティが高まった例もあったという。

 そこでこうしたアプローチを、直接的に顧客接点を持たないメーカー側にもソリューションとして提供することに事業機会があると考えたのだ。

新商品のトライアルとLTVの向上に関心

 現在、「リテールメディア推進部」には18人が在籍し、全体企画、広告営業、店舗のメディア化の大きく3つで役割分担し業務を進行している。

 セブン-イレブンのリテールメディアの強みは

続きを読むには…

この記事はDCSオンライン+会員限定です。
会員登録後、DCSオンライン+を契約いただくと読むことができます。

DCSオンライン+会員の方はログインしてから閲覧ください。

1 2

記事執筆者

ダイヤモンド・チェーンストア編集部 / 株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア

ダイヤモンド・チェーンストア編集部は、業界をリードする提案型編集方針を掲げ、小売業の未来を読者と共に創造します。私たちは単なるニュース伝達に留まらず、革新的なビジネスモデルやトレンドを積極的に取り上げ、業界全体に先駆けて解説することを使命としています。毎号、経営のトップランナーへの深掘りインタビューを通じて、その思考や戦略を読者に紹介します。新しくオープンする店舗やリニューアルされた店舗の最新情報を、速報性と詳細な分析で提供し、読者が他では得られない洞察を手に入れられるよう努めています。私たちの鋭い市場分析と、現場の細部にわたる観察を通じて、注目すべき店舗運営の秘訣を明らかにします。

ダイヤモンド・チェーンストア編集部紹介サイトへ

関連記事ランキング

関連キーワードの記事を探す

© 2024 by Diamond Retail Media

興味のあるジャンルや業態を選択いただければ
DCSオンライントップページにおすすめの記事が表示されます。

ジャンル
業態