SIPストアにリテールメディア… セブン-イレブン、注目の成長施策の進捗

2023/09/26 05:57
大宮 弓絵 (ダイヤモンド・チェーンストア 副編集長)
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セブン-イレブン・ジャパン(東京都/永松文彦社長:以下、セブン-イレブン)は9月20日、秋冬商品政策説明会のなかで、リテールメディア事業や新コンセプト店舗「SIPストア」の出店計画など、今後の成長施策についての進捗について明らかにした。その内容をレポートする。

「メディア収入」で
25年度までに30億円めざす

 国内人口が減少する一方、激化する店舗間競争により、かつてのような積極出店による成長が難しくなっているコンビニエンスストア。こうしたなか大手コンビニ各社は新たな成長施策に大きく舵を切っている。

 その1つとして注目を集めているのが、リテールメディア事業だ。スマホアプリや、店舗に設置するデジタルサイネージなど、小売業の顧客接点をメディアとして活用して、広告収入を得るというものだ。小売業のなかでもCVSは、圧倒的に多くの店舗数とリアルな顧客接点を持つことから、リテールメディア事業における競争優位性が高いと見られている。
 
 セブン-イレブンは、自社アプリでの広告や、動画共有メディア「YouTube」など外部メディアへの購買データを活用した広告配信などの「メディア収入」を、2025年度までに30億円を超える規模に成長させる目標を掲げている。

 なかでも注力しているのは、自社アプリの活用だ。約2200万人の会員を持つ自社アプリ「セブン-イレブンアプリ」上で、購買履歴に応じたターゲティングによる広告や、購買につながるクーポンの配信を行う。

アプリ広告×クーポン
×レポートで価値を提供

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「セブン-イレブンアプリ」の広告配信イメージ

 直近の成功事例としては、某化粧品メーカーとの取り組みでは、自社アプリの20~60代女性約250万人のうち、「アプリ広告あり」「アプリ広告なし」で、某化粧品メーカーのクーポン利用率を比較したところ、「アプリ広告あり」の方が31%高かった結果がでた。これだけでなくセブン-イレブンは、クーポン利用者の利用者層や同時購入商品、購入時間帯など、顧客データをレポートし、広告主が次の施策に生かしPDCAサイクルを回せる価値を提供する。

24年2月期中に
約100店に追加設置

 デジタルサイネージの活用については、ファミリーマート(東京都)が23年末までにデジタルサイネージメディア「FamilyMartVision(ファミリーマートビジョン)」の設置を約1万店まで一気に広げるという方針を述べている。

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セブン-イレブンはデジタルサイネージの設置については投資対効果を慎重に見定める方針だ

 対して、セブン-イレブンは慎重な姿勢を見せている。現在、首都圏約100店(23年7月15日時点)でデジタルサイネージの実験を行っており、設置パターンをさまざま試しながら検証を重ねている。24年2月期中にはさらに約100店に設置する方針だ。
 
 セブン-イレブン商品戦略本部長 兼 商品本部長の青山誠一氏は「競合他社さまが先行しているが、どの程度、投資対効果が上がるのか見極めてから、自社の今後の方針を決めていきたい」と述べている。

サイネージが
すべてではない
レジ画面も活用

 加えてレジ画面の活用についても言及している。「デジタルサイネージの設置がすべてではない。セブン-イレブン約2万1000店には、1店2台の単純換算でも、約4万2000台のレジを有しており、これを広告に活用することもできる。できることはどんどん進めていきたい」(青山氏)。
 

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記事執筆者

大宮 弓絵 / ダイヤモンド・チェーンストア 副編集長

1986年生まれ。福井県芦原温泉出身。同志社女子大学卒業後、東海地方のケーブルテレビ局でキャスターとして勤務。その後、『ダイヤモンド・チェーンストア』の編集記者に転身。最近の担当特集は、コンビニ、生協・食品EC、物流など。ウェビナーや業界イベントの司会、コーディネーターも務める。2022年より食品小売業界の優れたサステナビリティ施策を表彰する「サステナブル・リテイリング表彰」を立ち上げるなど、情報を通じて業界の活性化に貢献することをめざす。グロービス経営大学院 経営学修士

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