第1回 クローガーの「オカドシェッド」を徹底解説
鮮明化するアマゾンや
ウォルマートとの違い
クローガーが推進するCFCのデジタル化路線は、生鮮宅配のライバルであるアマゾンやウォルマートのDXとは一線を画すものだ。
アマゾンがレジレス決済の「ジャスト・ウォーク・アウト(Just Walk Out)」技術や「手かざし決済」、ラスト・ワンマイル区間における自動運転の配送カートなどに注力し、ウォルマートが小規模の自動フルフィルメント・センターやラスト・ワンマイルの自動運転トラックなどの導入など、どちらかと言えばリテール下流でDXによる効率化を進めている。それに対し、クローガーは上流のCFCにおける能率を高めることで需要に対応しようとしているからだ。
この面で、クローガーは圧倒的な優位にある。人力では1人が1時間に数十点の商品をピックするのが精いっぱいだが、前述のように、オカドが開発したソフトウェアで運用されるCFCでは、1台のロボットが50もの商品を最短3分間でピックできるからである。
筆者はウォルマートで買物をする際に、客に交じって人間のピッカーが、オンライン注文を受けて棚に置かれた商品を買い物カートに入れている様子をよく見かける。だが、そうした商品は店舗内の倉庫から人手を使って搬出し、棚に並べたものだ。さらに遡れば、配送センターで人が仕分けし、店舗別にトラックで運送され、店舗内の倉庫で従業員が荷ほどきをしたものである。それを、また人手でピックして袋や箱に詰めるのだから、何重もの手間や人件費、時間がムダになっていることは、容易に想像できる。生鮮宅配の需要がさらに伸びれば、フルフィルメント分野の効率や収益でウォルマートは、クローガーにかなわないと思われる。
オンラインリテールの未来は
ソフトウェア開発力にあり?
また、アマゾンも傘下のホールフーズに加え、自前の店舗を展開し、そうした店に倉庫・配送機能を持たせている。だが、クローガーは全米の主要拠点にデジタル化されたオカドシェッドを建設することにより、上流において徹底的に効率と収益を追求する構えであるところが、相違点だ。
クローガーのデジタル担当取締役であるヤエル・コセット氏は、オカドシェッドの稼働に当たり、「弊社は、実店舗の買い物体験と、デジタル体験のベストな部分を組み合わせた、シームレスなエコシステム構築を目指しており、オカドのテクノロジーと人工知能(AI)で、そうした体験をさらに高める」と語っている。オンラインリテールの成否が、ソフトウェア開発力、つまりプログラムコードの集積となる未来が描かれている。
クローガー・オカド連合のDXの開拓者としての試みが吉と出るかは数年内に判明するだろうが、「上流DX」対「下流DX」の勝負の行方が、大いに注目すべきであることは間違いないだろう。
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