ロボット活用最前線 小売の課題はロボットが解決する!

2019/01/10 12:00
ダイヤモンド・リテイルメディア 流通マーケティング局

人手不足の深刻化が止まらない。業界・業種を超えた激しい人材獲得競争にさらされるなか、小売業各社は、採用強化だけでなく、商品・サービスの見直しや既存業務の改善活動、人員配置の見直しといった生産性を高めるための施策に心血を注いでいる。 数ある生産性向上策のなかで、多くの小売業が取り組んでいるのが進化を続けるデジタル技術の活用だ。そして、そのなかの“大本命”として期待がかかるのが、これまで人間が行ってきた作業を代替するようなロボットの導入である。

ロボティクスイメージ

 

ロボット導入が進まない小売業界の事情

ロボットは自動車産業をはじめとした製造業を中心に導入されてきた。ロボットアームに代表される、いわゆる「産業用ロボット」により、製造業の現場の効率は大幅に向上し、作業者の負担・危険は大きく軽減されている。これに対して小売企業、とくに食品を扱う食品スーパー(SM)では、1人の人間が担当する業務が多岐にわたること、多品目小ロット生産であること、そして形状や性質がさまざまという食品特有の“扱いづらさ”の問題から、ロボット導入が大きく遅れている。小売店の店頭で見かけるロボットといえば、ヒト型ロボットの「Pepper(ペッパー)」くらいだろう。

「物流自動化」の動きが活発に

 ただ、そうしたなかでも、先進的な小売企業は着々とロボットの導入を進めてる。店頭での対人サービスやバックヤード作業など小売業の仕事は多岐にわたる。そのなかで近年、急速にロボット技術による自動化が進んでいるのが、物流の領域である。

 現在、ロボットを活用した物流自動化の主流といえるのは、「自動倉庫」と「自動搬送ロボット」だ。特許関連の事情に詳しい専門家の中園郁子氏によると、近年は、自動倉庫や自動搬送ロボットに関する特許の出願件数が急増しているという。

 EC世界最大手アマゾンがキバ・システムズ(Kiva Systems、現アマゾンロボティックス)の倉庫ロボットを自社倉庫に導入したのが2014年のこと。「物流自動化」に関する技術の特許出願が急増し始めたのもこの頃からだ。 アマゾンに対抗するように、小売世界最大手のウォルマート(Walmart)も物流自動化にかかわる特許を次々と出願している。同社は18年8月、米ニューハンプシャー州の店舗を拡張し、店舗と倉庫が一体化したマイクロ・フルフィルメントセンターを開設。カート型ロボット「アルファボット(Alphabot)」を使い、業務の自動化・効率化に挑戦している。

工場内の様子
コープさっぽろのAutoStore

 そのほか、米SM最大手のクローガー(Kroger)も、英国ネットスーパー専業のオカド(Ocado)と独占的提携を締結。オカドが持つ自動倉庫やネットスーパーのノウハウを活用した最新物流倉庫を拡大中だ。 国内でもファーストリテイリング(山口県/柳内正会長兼社長)が、倉庫の自動化に向けてマテハンサプライヤー大手のダイフクと提携したほか、コープさっぽろ(北海道/大見英明理事長)もノルウェー発の自動倉庫ピッキングシステム「AutoStore(オートストア)」を導入するなど、「物流自動化」の動きが活発化している。

「協調型ロボット」をどう活用するか

図表
図表「協働ロボットの世界市場規模推移と予測」
出典:矢野経済研究所
※メーカー出荷金額ベース。産業用ロボット(ISO8373)のうち、ISO10218︲1に適合したものが対象。2018年は見込値、2019年以降は予測値

 物流以外の領域でのロボット活用は進んでいるのだろうか。小売の現場での業務のうち、ロボットによる代替が考えられるのは、店頭での対人サービスや、店内での在庫管理といった業務だ。

 また、「変なホテル」のように魅力的な顧客体験を提供するためにロボットが活躍するという方向性もある。 こうした領域で活躍するとみられるのが、「協調型ロボット」と呼ばれるタイプのロボットである。小売業の現場で活用されるロボットは、人との協働を前提とした「協調型」と、そうではない「非協調型」に大別され、前述の物流の領域における自動倉庫やピッキングシステムなどは後者に分類される。人が行き交う店内やバックヤードでロボットを導入するとなれば、前者の協調型ロボットをいかに活用していくかがポイントとなる。

 その一例が、ウォルマートが採用している、ボサノバ・ロボティクス(Bossa NovaRobotics)社の「棚管理ロボット」だ。商品の在庫状況や価格を確認する同ロボット。通路に顧客やスタッフがいるときは、読取作業を一時中断するなど、ロボットと人との協業を実現している。 ただ、こうした協調型ロボットは高度なテクノロジーが求められるため、導入している企業はまだ少ない。

 だが、協調型ロボットはこれから本格的な拡大フェーズに入ると見られている。 矢野経済研究所によると、協働型(協調型と同義)ロボットの世界市場規模は、19年に対前年比50%増の1500億円に達するという調査結果を報告している(図表)。

 さらに同調査では、市場はこの先も対前年比最大70%で成長を続け、5年後の24年に8500億円まで膨れ上がると予測する。協調型ロボットの技術開発が進展し、量産化が実現すれば、小売の現場へのロボット導入も大きく進むのは間違いないだろう。

「コスト」の問題を乗り越えるには

「コスト」の問題を乗り越えるには の画像

 人手不足解消の大本命であるロボットだが、小売企業が導入していくにあっては、コストの問題がハードルとして立ちはだかる。導入するにはその企業にあわせた開発およびチューニングが必要となるため、その分導入コストが膨れ上がる。また、一部で量産化が実現している自動倉庫のような仕組みも大掛かりなものが多く、莫大な投資が必要とされるのが現状だ。

 ただ、そうしたなかでも、流通専門家の高島勝秀氏は、「いちばんよくないのが『何もやらない』ということだ」と消極的な姿勢に対して警鐘を鳴らす。アマゾン、ウォルマートをはじめ、先進的な企業はすでにロボットを活用し始めている。ロボット自体のコモディティ化が進み、だれでも導入可能な段階になったときに初めて手を付けるようでは、これら先行企業との差は取り戻せないほどに開いてしまっているというのだ。

 では、小売企業はどのような領域からロボット導入を始めていけばいいのか。「明日からできるロボット活用」として注目されるのが、RPA(Robotic Process Automation:ロボティック・プロセス・オートメーション)である。いわゆる「ハードウエア」のロボットではなく、PC上で動作するソフトウエアロボットによる業務自動化を図るものだ。 RPAサービス大手のRPAテクノロジーズでは月額5万~7万5000円ほどで導入できるパッケージも用意している。まずはRPAによる、受発注や売上入力といった事務作業の自動化をロボット活用の第一歩として始めてみるのもいいかもしれない。

アシストスーツ着用イメージ
ユーピーアールのアシストスーツ

 また、厳密にはロボットではないかもしれないが、作業者の体の負担を軽減するアシストスーツのようなツールを導入していくのも打ち手の1つだ。アシストスーツ事業を手がけるユーピーアールでは、2万円台のアシストスーツをラインアップしており、販路を拡大中だ。こうした比較的安価に導入可能な技術・ツールをロボット導入の“入口”として使っていくのは有効だろう。

 いずれにせよ、当面人手不足問題が解決する兆しはなく、今後も生産性向上という課題は小売企業について回る。最近はテック系スタートアップ企業が続々と登場し、新しいロボット技術が発表されている。小売企業としては、まず、自社が効率化・省人化したい分野を見極め、導入可能なものから積極的に実験し、取り入れていきたいところだ。

 

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