有力企業がすでに実践!コロナ禍でも、総菜の売上を伸ばせる理由と伸ばし方

大宮 弓絵 (ダイヤモンド・チェーンストア 副編集長)
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総菜新戦略

成長著しい部門から一気に不振部門へ

 新型コロナウイルス感染症の影響による、消費者の買い貯め需要の発生などを受けて、食品スーパー(SM)各社の業績は大きく伸長している。業界3団体が発表する「スーパーマーケット販売統計調査」におけるSMの食品の既存店売上高は、政府からの一斉休校要請発表後の3月から対前年同月比を2ケタ前後で上回る活況を呈している(図表)。

 しかしその数字の内訳を見ると、生鮮3部門や一般食品はいずれも伸長するなか、唯一販売が振るわないカテゴリーがある。総菜部門だ。3月以降、前年同月実績を超えたことは1度もなく、4月に至っては同95.1%まで数字が落ち込んでいるのだ。

 総菜部門と言えば、共働き世帯の増加などによる食事の準備の時短や、簡便ニーズを取り込み、近年SMのなかで成長著しいカテゴリーとして、各社が競って強化してきた部門である。

食品スーパーの2020年既存店売上高対前年同月比の推移 それがなぜ、コロナ禍で一気に売上が振るわない部門となってしまったのか。

 まず要因の1つに、買物客の来店頻度の減少がある。コロナ禍で買物客は、感染リスクを低減させるために来店頻度を減らし、まとめ買いをするようになっている。つまり、自宅では買い貯めした食品を複数日にわたって少しずつ消費することになるが、そうすると総菜は保存性が高くないため、基本的に当日または翌日分くらいまでしか購入してもらえない。そのため買物頻度の減少が、総菜部門の売上減につながっていると考えられる。

 また、内食志向の高まりもある。外出自粛生活により自宅で過ごす時間が増えたことから、素材を買って自身で調理する人が増えているのだ。時間的余裕ができたことに加えて、経済状況の悪化で節約志向が高まっていることもあり、総菜は消費者にとって割高な商品になってしまっていることも想定される。

 さらに、感染予防の観点から従来の総菜の売場づくりができなくなったことも挙げられる。とくに総菜部門のなかでバラ売りや量り売り形式の売場は、大きな売上を稼いでいたうえ、総菜の魅力である出来たて感や、メニューを選ぶ楽しさの演出に寄与していた。それが飛沫感染防止のために個包装やパック詰めといった形態で販売されるようになったことで、消費者の購入を促すことが難しくなっている。

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記事執筆者

大宮 弓絵 / ダイヤモンド・チェーンストア 副編集長

1986年生まれ。福井県芦原温泉出身。同志社女子大学卒業後、東海地方のケーブルテレビ局でキャスターとして勤務。その後、『ダイヤモンド・チェーンストア』の編集記者に転身。

最近の担当特集は、コンビニ、生協・食品EC、物流など。ウェビナーや業界イベントの司会、コーディネーターも務める。2022年より食品小売業界の優れたサステナビリティ施策を表彰する「サステナブル・リテイリング表彰」を立ち上げるなど、情報を通じて業界の活性化に貢献することをめざす。グロービス経営大学院 経営学修士

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