並松誠社長が語る、高質スーパー阪急オアシスが”標準化”を進める理由

聞き手:阿部 幸治 (ダイヤモンド・チェーンストア編集長)
サテライトコープ:森本 守人 (サテライトスコープ代表)
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大阪府に本部を置き、京阪神エリアで店舗展開する阪急オアシス。競争が激化する中、差別化をねらった品揃えの強化、生産性向上への取り組みなどにより、確実に利益を確保できる企業体質への転換を図る。「当社の勝ちパターンを構築したい」と話す並松誠社長に事業展望について聞いた。

過剰在庫を大幅に低減

──昨年4月の社長就任以降、どのような戦略のもと、施策を打ってきましたか。

阪急オアシス代表取締役社長 並松 誠
なみまつ・まこと●1953年3月生まれ。1975年、関西学院大学経済学部卒業、同年、阪急百貨店に入社。2003年同社執行役員、08年阪急阪神百貨店執行役員、09年同社常務執行役員、10年同社取締役常務執行役員、15年同社取締役常務執行役員博多阪急店長。18年、阪急オアシス代表取締役社長(現任)

並松 当社は長らく拡大路線を歩んできました。前社長、千野の強いリーダーシップのもと、M&A(吸収合併)を手掛ける一方、2009年7月からは食品スーパー(SM)の独自フォーマット「高質食品専門館」を積極的に出し、店舗網を大きく広げました。これにより当初250億円ほどだった売上高は、約17年の間に1200億円近くにまで伸びました。

 そのような状態で経営のバトンを受け取りました。私の使命は、これまで築いてきた事業基盤をさらに強固なものにしたうえで、次なる成長を実現することだと認識しています。そのもと18年度は、「整える」をテーマに掲げ、それまでの事業を見直すところからスタートしました。

──具体的には何に取り組みましたか。

並松 着手したのは、グロサリーや日配品を中心に、約39億円あった過剰な在庫の低減です。商談のやり方を変えたほか、商品の絞り込みなどを順次進め、昨年9月の上期末時点で、30億円弱の水準にまで下げました。

 同時に、商売の基本に立ち戻るため、展開および販売計画の立案、実施を徹底しました。3か月先に、どのような仮説、考え方のもと、何をいかに売るかを、販売促進部、商品部が私にプレゼンテーションする場を設け、店舗とのコミュニケーションも強化しています。これにより重点商品を中心に月、週単位で売り込むという姿勢の定着を図りました。

 それらの施策を通じ、在庫が適正化されたほか、各店、従業員の意識も徐々に変化し、手応えを得ました。

──今後はどのような方針で、経営にあたりますか。

並松 経営環境は厳しさを増しています。競争は激化する一方、人材確保も難しく、またコスト高などの要因も重なり、売上を大きく伸ばすことはさらに難しくなるだろうと見ています。その中、当社がめざすのは利益を重視した経営です。

 具体的には19年度を初年度とし3年を期間とする中期経営計画を実施します。「高利益体質への転換」を大きな目標に定め、品揃え、販促などを見直すほか、マーケット特性に応じた販売の強化、また業務標準化、省力化による生産性向上を進める考えです。テーマに設定するのは「攻める、変える、変わる」──。新たな施策にも積極的にチャレンジ、この3年間で阪急オアシスの勝ちパターンを構築したいと考えています。

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聞き手

阿部 幸治 / ダイヤモンド・チェーンストア編集長

マーケティング会社で商品リニューアルプランを担当後、現ダイヤモンド・リテイルメディア入社。2011年よりダイヤモンド・ホームセンター編集長。18年よりダイヤモンド・チェーンストア編集長(現任)。19年よりダイヤモンド・チェーンストアオンライン編集長を兼務。マーケティング、海外情報、業態別の戦略等に精通。座右の銘は「初めて見た小売店は、取材依頼する」。マサチューセッツ州立大学経営管理修士(MBA)。趣味はNBA鑑賞と筋トレ

サテライトコープ

森本 守人 / サテライトスコープ代表

 京都市出身。大手食品メーカーの営業マンとして社会人デビューを果たした後、パン職人、ミュージシャン、会社役員などを経てフリーの文筆家となる。「競争力を生む戦略、組織」をテーマに、流通、製造など、おもにビジネス分野を取材。文筆業以外では政府公認カメラマンとしてゴルバチョフ氏を撮影する。サテライトスコープ代表。「当コーナーは、京都の魅力を体験型レポートで発信します」。

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