有力企業がすでに実践!コロナ禍でも、総菜の売上を伸ばせる理由と伸ばし方

大宮 弓絵 (ダイヤモンド・チェーンストア 副編集長)
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次なる方向性は「高品質」「保存性」

 新型コロナウイルスの影響は長期化が予測され、総菜部門の環境変化はもはや一過性のものではない。今後はこれからの需要を予測し対応していくことが必要となっている。では今後、総菜部門には何が求められるのか。

 外食との競争激化を見据えて、商品開発を進めているのが阪急オアシス(大阪府)だ。同社は飲食店が続々と乗り出しているデリバリーやテイクアウトサービスが今後、SMの総菜の競合になってくると想定し、従来よりも品質にこだわった商品開発に挑戦していくという。

 このように、調理のプロの手によるおいしさを強みとする外食メニューのほか、自宅で料理する人が増えていることから、家庭料理との差別化を図ることもSMの総菜開発のポイントになってくるだろう。たとえば前出の利恵産業では商品開発に元在インド日本大使館料理長の経歴を持つ人材を起用しており、そうした質の高い総菜をつくれる体制構築もこれからは必要かもしれない。

 保存性の高い総菜の開発を一気に進めているのが、九州地方で総菜専門チェーンを展開するヒライ(熊本県)だ。同社は高齢化社会ではお客に週に何度も来店してもらうのが難しくなることを見越し、かねてより冷凍総菜の開発を構想しており、今回のコロナ禍で冷凍弁当の販売をスタート。消費者からの反応に手ごたえを得ているという。たしかに、保存性の向上で総菜をまとめ買いしてもらえるようになれば、コロナ禍においても総菜の売上向上につながりそうだ。

 これまで総菜部門は時代のニーズの恩恵を受け、各社とも順調に売上を伸ばしてきた。しかしコロナショックにより、初めてともいえる試練に直面し、創意工夫をしなければ売上を獲得できない状況になっている。

 この局面にいかに対応し、新たな需要を取り込めるか。このスピードや優劣が、今後さらに激化するSMの競争の勝敗を決める重要な要素の1つとなるかもしれない。

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記事執筆者

大宮 弓絵 / ダイヤモンド・チェーンストア 副編集長

1986年生まれ。福井県芦原温泉出身。同志社女子大学卒業後、東海地方のケーブルテレビ局でキャスターとして勤務。その後、『ダイヤモンド・チェーンストア』の編集記者に転身。最近の担当特集は、コンビニ、生協・食品EC、物流など。ウェビナーや業界イベントの司会、コーディネーターも務める。2022年より食品小売業界の優れたサステナビリティ施策を表彰する「サステナブル・リテイリング表彰」を立ち上げるなど、情報を通じて業界の活性化に貢献することをめざす。グロービス経営大学院 経営学修士

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