「Shein訴訟」も追い風に 米国で存在感増すユニクロ、現地の反応は?

在米ジャーナリスト:岩田太郎
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米メディアの扱いが増加

 ユニクロの今後の北米事業の成否を握るのは、塚越社長も重要視するブランド認知だ。その面において、塚越氏の目論見は当たりつつあるように見える。

 たとえば、南部テキサス州最大都市のヒューストンのモールにユニクロがオープン予定の同州第1号店について報じた米ニュースサイトのアクシオス(Axios)は、「ユニクロファンたちよ、喜べ。ユニクロが9月にメモリアル・モールのフォエバー21の跡地にやってくる」と伝えた。

 まだ店舗がないテキサス州で、すでにユニクロがファン層を抱えていることがうかがえる。同時に、出店の文脈として「ユニクロが熱心なファンを開拓できたのは、そのミニマリズム、品質、お買い得さ、そしてサステナビリティが評価されたからだ」と同記事が分析したことは、LifeWearのコンセプトが米国で受容され、北米事業拡張が成功する可能性を示唆している。

 また、人口増が続いて経済も好調なテキサス州の第2号店として、ユニクロが州第2の年である北部ダラス近郊に出店を計画していることも報じられており、「勢いがあるチェーン」との印象を与えることに成功している。

 また、一部の米メディアではユニクロが2023年に発表したヒット商品の「ラウンドミニショルダーバッグ」が20ドル(約3000円)と安価ながら「ミレニアル世代のバーキン」として親しまれ、短編動画サイトTikTokで1億2000万回近くの閲覧があったことが紹介されている。

 ユニクロは2024年1月に、中国発のファストファッション大手シーイン(Shein)がラウンドミニショルダーバッグの模倣品を販売したとして販売停止と損害賠償を求める訴訟を提起したが、これが米国で大きく報じられ、結果的に「模倣されて損害を受けた人気ブランド」との印象を与えていることは特筆に値する。ネガティブなニュースだが、ユニクロの立ち位置は「よいモノを作って模倣された被害者」であり、ブランド認知が向上している。

 ユニクロの米国における2023年の売上はドルベースで前年比28%伸びたと米小売調査企業のコンシューマーエッジ(Consumer Edge)が発表するなど、2024年に向けて北米事業の上昇気流は続きそうだ。

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