米雇用が失速、8月23.5万人増 デルタ株直撃 賃金4.3%上昇

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NY市で求人募集する店舗
米労働省が3日発表した8月の雇用統計は、非農業部門雇用者数が前月比23万5000人増と、市場予想の72万8000人増を大きく下回る伸びとなった。NY市で求人募集する店舗。8月撮影(2021年 ロイター/Eduardo Munoz)

[ワシントン 3日 ロイター] – 米労働省が3日発表した8月の雇用統計は、非農業部門雇用者数が前月比23万5000人増と、市場予想の72万8000人増を大きく下回り、過去7カ月間で最も低い伸びにとどまった。新型コロナ変異ウイルス「デルタ株」の感染拡大に伴い、飲食業中心に採用を手控える動きが広がった。

7月の雇用者数は105万3000人増へ上方改定された。雇用者数がピークに達した2020年2月以降、なお530万人程度の雇用が失われていることになる。

こうした中、8月の失業率は5.2%と、7月の5.4%から改善。1年5カ月ぶりの低水準になった。ただ、調査で「雇用されているが休職中」と誤って回答している人がいるため、低めの数字に抑えられており、こうした要因を除いた場合、失業率は5.5%に高止まったもようだ。現在は職を探していないが働く用意のある人(縁辺労働者)や正社員になりたいがパートタイム就業しかできない人を含む広義の失業率(U6)は前月の9.2%から8.8%と、1年5カ月ぶりの水準に改善した。

時間当たり賃金は前月比0.6%上昇し、予想の0.3%の2倍の伸びとなったほか、前年同月比では4.3%と、前月の4.0%から伸びが加速した。コロナ禍の影響で労働者が不足する中、低賃金の産業中心に賃金は上昇傾向にある。6月末時点で求人数は過去最高の1010万件を記録した。

サクソ・マーケッツのグローバルセールストレーダー、マイク・オーウェンス氏は「賃金の伸びが前年比4.3%と、予想の3.9%を大幅に超えた。これは物価高進が一過性という米連邦準備理事会(FRB)の主張と矛盾する」と指摘。ボストン・カレッジのブライアン・ベスーン教授は「正しい視点を持つことが重要だ」とした上で、「サプライチェーン(供給網)の制約や新型コロナとの継続的な闘いを踏まえると、経済は目立って底堅い」と評価した。

8月の雇用は20年を含む最近数年の7月までの3カ月平均も下回ったが、8月の統計は過去12年間のうち、11年間でその後上方修正されている。

ネーションワイドのチーフエコノミスト、デービッド・バーソン氏は「8月の雇用者数についてはこれまでも上方修正されており、今回もそうなる可能性が高い」と予想した。

雇用者数の内訳は、レジャー・接客の伸びがゼロとなったほか、レストラン・バーは4万2000人減少。ホテル・モーテルは3万4600人減、小売りも2万9000人減った。建設は3000人減。一方、芸術・娯楽・レクリエーションは3万6000人増加。専門職・企業サービスや運輸・倉庫も伸びた。製造業は3万7000人増加。このうち自動車関連が2万4100人増えた。

政府部門は8000人減少。教育関連が2万1000人減った。雇用統計を作成している労働統計局では「コロナ禍に関連した公立・私立教育機関の職員の変動が通常の季節的な雇用・解雇パターンをゆがめており、最近の雇用の変化に関する解釈を難しくしている」と認めた。

生産活動に従事し得る年齢の人口に占める働く意志を表明している人の割合、いわゆる労働参加率は61.7%と、7月から横ばい。恒久失業者は44万3000人減少し250万人。長期失業者も前月の340万人から320万人に減った。失業者全体に占める割合は37.4%。失業期間は7月の15.2週間から14.7週間に縮小した。

デルタ株のまん延や原材料不足による自動車販売と在庫の低迷により、エコノミストは第3・四半期の国内総生産(GDP)予想を大きく下方修正している。

FRBがテーパリング(量的緩和の縮小)を始める時期を推し量るため、投資家は雇用統計の結果に注目。パウエル議長は先週、景気回復が続いていることを認めたが、テーパリング開始時期については「年内」が適切との見方を示しながらも、具体的な時期については明言を避けた。

複数のエコノミストは予想を下回った今回の雇用統計が、テーパリングの「年内」開始をFRBが取り下げるほど弱くはなかったと考えている。JPモルガンの米国担当チーフエコノミスト、マイケル・フェローリ氏は「FRBによるテーパリングの発表は、11月か12月のどちらかになる可能性が依然として高い」と述べた。

原材料不足で企業は在庫の補充に苦労している。自動車販売は8月に10.7%下落し、ゴールドマン・サックスやJPモルガンは第3・四半期のGDP予想を高いもので年率8.25%増から、低いもので同3.5%増へ引き下げた。第2・四半期は6.6%増だった。

記事執筆者

ダイヤモンド・リテイルメディア デジタル推進室 / 株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア

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