コロナ収束で明暗、伸びる業態と縮む業態、寡占化する業態は?小売業、市場占有率2023

大宮 弓絵 (ダイヤモンド・チェーンストア 副編集長)
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DgSの食品売上高がイオン、セブンに次ぐ規模に

 このようにコロナ収束下での消費行動の変化や、各種コスト増などの外部環境の変化を受けて、好調な業態、不調な業態と明暗が分かれている。しかし、押さえておきたいのは、すでに状況は業態を超えた戦いに突入していることだ。

 象徴的な事例として挙げたいのが、生鮮を含む食品の扱いを強化しているDgSの存在だ。各社集客を目的に圧倒的な低価格で食品を販売し、とくにSMにとっては手ごわい存在となっている。

 本特集では、国内の食品小売マーケットに占める、SMやCVSなど大手食品小売企業・グループと、大手DgS10社の食品売上高のシェアを調査した。すると、21年度のDgS10社の合算値は1兆7111億円と、前年度比で1000億円近く伸長。食品売上高第3位の「ファミリーマート」を超え、イオン(千葉県)、セブン&アイ・ホールディングス(東京都)グループの主要企業合計値に続く規模にまで拡大していることがわかった。

 こうした業態の垣根を越えた競争が激化するなか、各社はいかに戦っていくべきか。

 アクシアル リテイリング(新潟県)の原和彦社長は、今後、食品小売業界で勝ち抜いていくために重要なことについて、「店舗の競争力を高めるべく、物流・製造拠点・ITなどの各機能を充実させることが必要不可欠」と述べている。たとえば同社は07年にはIT企業のアイテック(新潟県)を設立し、店舗運営の効率化を図るソリューションを自前で開発するなど、各機能に積極投資し、それが現在の収益性の維持・向上に生かされている。

今年3月、SM4社が物流領域での協業を発表した記者会見
今後の競争を勝ち抜くには、商品や物流、ITなどにおいて、積極的に広く他社と手を組むことも重要になってくる。写真は今年3月、SM4社が物流領域での協業を発表した記者会見

 昨今では自力での成長や、資本による提携だけではなく、他社との連携や協業などにより競争力向上を図る動きも増えている。前出の松岡氏は「企業間連携は、かつて同じ業態同士というのが主な流れだったが、これからは業態の垣根を越えたアプローチも考えるべきだろう」と話し、単に競争するのではなく、商品や物流、ITなどにおいて、積極的に広く他社と手を組むことも重要になってくるとしている。

 今回の特集を通じて見えてきたのは、コロナ禍を経て、食品小売業界では競争環境の激変が起きていることだ。今後は、消費の二極化もいっそう進んでいくと予想されている。今こそ、各業態の変化や時流をつかみ、自社がどのような道を歩むべきか十分に見極めたい。

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記事執筆者

大宮 弓絵 / ダイヤモンド・チェーンストア 副編集長

1986年生まれ。福井県芦原温泉出身。同志社女子大学卒業後、東海地方のケーブルテレビ局でキャスターとして勤務。その後、『ダイヤモンド・チェーンストア』の編集記者に転身。最近の担当特集は、コンビニ、生協・食品EC、物流など。ウェビナーや業界イベントの司会、コーディネーターも務める。2022年より食品小売業界の優れたサステナビリティ施策を表彰する「サステナブル・リテイリング表彰」を立ち上げるなど、情報を通じて業界の活性化に貢献することをめざす。グロービス経営大学院 経営学修士

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