反動減からついに脱出? 家電量販店の台風の目になるのは……大手家電7社を分析

棚橋慶次
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コロナ反動減から脱出? 通期業績は増収予想!

 ここからは通期の業績見通しを見ていきたい。上期決算発表時点における、各社の通期業績予想はノジマ(対前期比±0.0%)、上新電機(同2.6%)、エディオン(同3.1%増)、ケーズHD(同0.8%増)、ヤマダHD(同1.7%増)といずれも前期実績プラスを想定している(ヨドバシカメラは非公表)。ちなみに今回が通期決算だったビックカメラは、2023年8月期の業績予想を公表しているが、こちらも増収見込みとなっている。

 気になるのは、各社の業績がコロナ禍以前よりも上積みされているかという点だ。2020年3月期との比較では、ノジマ(11.7%増)、ケーズHD(10.3%増)、ヤマダHD(8.1%増)、エディオン(3.4%増)、上新電機(2.5%増)の順で売上増を見込む。

 一方、ビックカメラだけは対2019年8月期比で7.9%減と大きく落ち込む。連結子会社であるコジマ(栃木県)の業績は堅調だが、ビックカメラ本体の業績がインバウンド消滅の影響が直撃しているかたちだ。

 つまり、ビックカメラ、今期予想が不明のヨドバシカメラを除いた5社は、コロナ特需の反動からようやく抜け出し、通期ではコロナ禍以前の水準を上回ることができそうだ。

家電量販店業界、台風の目になるのは……

 各社ごとの比較では、絶頂期(2010年前後)より売上高を落とし続けてきた家電量販店業界の“ガリバー”ことヤマダHDが、比較的健闘しているのが目を引く。ただしヤマダHDの場合、健闘しているのは住宅関連事業で、売上高全体に占める同事業の構成比はコロナ禍以前から7.9ポイントも伸びている(2020年3月期:8.8%→2022年3月期:16.7%)、家具・インテリア・GMS商品(スポーツ用品・おもちゃなど)も好調に推移する一方で、家電は6.3ポイント(60.7%→54.4%)、情報家電も1.0ポイント(20.0%→19.0%)と構成比を落としている。

 台風の目になると見られるのがヨドバシカメラだ。業績を開示していないため詳細な情報は得られないが、2022年3月期もコロナ特需の反動をはね返して対前期比2.8%増と売上高を伸ばしたのは驚きだ

ロピアが入るとされている「京都ヨドバシ」

 ヨドバシカメラはターミナル駅を中心に店舗展開しているが、総店舗数は2022年3月末時点で24店舗にすぎず、単純計算で1店舗当たりの売上高は300億円を超える。一方でトップのヤマダHDは978店舗(2022年3月末)を展開し、1店舗当たりの売上高は17億円となる計算だ。

 ヨドバシカメラの店舗運営効率は他社を圧倒しており、結果として売上高経常利益率も10%前後に達する。

 コロナ前より2ケタ伸びるノジマとケーズHDにも注目したい。ノジマはメーカー派遣員に頼らない自社社員による「コンサルティングセールス」、ケーズHDは現金値引きや家電商品特化へのこだわりと、競合にはない独自の戦略が成長に寄与している。

 人口減少に伴う市場縮小が見込まれ、暗い見通しとなりがちな家電量販店業界だが、さまざまな家電が並ぶ店舗をめぐるのは、ほかの業態にはない楽しさがある。大手各社が今後どんな戦略で売場を活性化していくのかに期待したい。

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