小売・EC・サービスの3ヶ月時価総額増加額ランキング! 1位、2位はヤフー親会社とZOZO、メルカリも大躍進

椎名則夫(アナリスト)
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 注目その1 躍進したZホールディングスと連結子会社のZOZO

写真左はZホールディングスの川邊健太郎社長、写真右はZOZOの澤田宏太郎社長
写真左はZホールディングスの川邊健太郎社長、写真右はZOZOの澤田宏太郎社長

 小売業以外の企業の躍進が目立つので、3つにポイントを整理したい。

 第一の注目はZホールディングス(4689)、その連結子会社であるZOZO3092)がそれぞれ1位、2位にランクインしている点だ。

 ZホールディングスはLINEとの統合を控えスーパーアプリ戦略への期待が高まるなか、4-6月期決算では営業利益段階でコマース事業の利益がメディア事業の利益をはじめて上回った点が注目される。

 業績を確認すると、全社営業利益(IFRS基準)は対前年同期比+144億円増益の506億円となったが、その内訳はコマース事業が同+196億円増益の363億円、メディア事業が同▲15億円減益の335億円、その他および調整額が同▲36億円減の▲191億円であった。コマース事業の増益+196億円のうち、同社IR資料に従えばZOZOの連結化の影響はZホールディングスの会計上は+73億円にとどまるとのことである。したがって残りの+123億円の増益は、ショッピング広告売上収益の増加、ZOZO連結を除いた真水でのショッピング事業取扱高の拡大、クレジットカード取扱高の増加、そして経費コントロールによってもたらされたと整理できる。

 額面通りに受け止める前に留意事項がないわけではない。巣篭もりの一時的な追い風を否定できないうえ、経費抑制のなかには一時的なものもあったようだ。現状コストセンターであるPayPayは持分法適用会社であるためその損益はZホールディングスの営業利益には関係していないこと、およびZOZOの連結化効果は営業利益段階では大きいものの親会社株主に帰属する当期純利益への寄与度は持分50.1%相当分にとどまることも無視はできない。

 しかし、今回「ショッピング取扱高を増やせば利益が伸びる」という道筋を示したこと、「コマース事業の利益額がメディア事業を超え基幹事業になってきたこと」は重要なメルクマールであり、経営陣の意思表示とも言えるだろう。株価も731日の決算発表後から828日までに+24%上昇しており(過去3ヶ月の上昇+54%の半分程度に相当)、この決算内容が評価されたことは疑いない。ECといえばアマゾン、楽天、あるいはヨドバシカメラなどが注目されてきたが、ここにZホールディングスも(改めて)名乗りをあげたと考えたい。

 次にZOZOだ。同社の4-6月期業績(日本基準)は商品取扱高が対前年同期比+19%増の953億円、売上高が同+19%増の336億円、営業利益は同+33%増の104億円、親会社株主に帰属する四半期純利益は同+37%増の73億円となった。新型コロナウイルスの影響によるアパレルへの逆風のなか、販路としての重要性を高め、主力のZOZOTOWN事業の受託ショップ取扱高は+12%増、売上高は同+21%増となり堅調だった。主要事業の一品単価が約▲11%低下したものの、出店ショップ数とアクティブ会員数を着実に底上げ、出荷件数は+24%増となっている。Zホールディングスとの事業シナジーの試金石となるPayPayモール事業の4-6月期は1-3月期の実績を下回り取扱高43億円、売上高12億円になったが、プロモーションを抑制した結果でありシナジー不在と判断するには時期尚早だ。Zホールディングス同様追い風参考の要素は否めないもののアパレルのECシフトは中長期的に不可逆的になるとの見立ても根強いはずだ。決算発表の730日から828日までに株価は+25%上昇しており、アパレルECプラットフォーマーとしての評価を高めたと言える。

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