ユニクロが実践、なぜダイバーシティの推進がイノベーションを生み出すのか?

北沢 みさ (MK Commerce&Communication代表)
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ダイバーシティの基本は、声を聴くこと

 2023年3月、ファーストリテイリングは、企業のダイバーシティ&インクルージョン(以下:D&I)推進の取り組みを評価する「D&Iアワード2022」において、ダイバーシティスコア96点(100点満点)を獲得し、最高評価の「ベストワークプレイス」に認定された。

 D&Iの取り組みを100項目に渡る独自の評価指標「ダイバーシティスコア」で採点し、スコアに応じて認定が授与されるもので、80点以上のスコアを獲得した企業が「ベストワークプレイス」として認定を受ける。「ベストワークプレイス2022」は128社(グループ連盟含めて313社)が認定を受けているが、初めての参加で95点以上を獲得する企業はごく限られている。

D&Iアワード ベストワークプレイス2022認定バナー

 「決して目新しいことをしたわけではありませんが、これまで私たちが取り組んできた領域が、D&Iアワードの100の項目を網羅的にカバーしていたということだと思います。ただ、私たちが大事にしているのは、常に当事者の声をしっかりと聴くということ。マイノリティの従業員には個別の面談を徹底して、どういったところで困っているのか生の声を聞いています。マイノリティのお客様の声は拾いにくいので、外部の当事者団体と連携して、お客様が我々に対してどういうことを感じられているのかを聞いています。それらの声の一つひとつを解決してきた、その結果が96点というスコアにつながったと思っています」(内田氏)

グローバル企業ならではの難しさ

 一方で、現在世界20以上の国や地域に進出しているグローバル企業だからこその難しさも経験している。

 たとえば、日本で作った、LGBTQ+の基礎知識や店舗でのお客対応および従業員間のコミュニケーションで配慮すべき点をまとめた「ダイバーシティガイド」を海外に適用しようとしても、すでに同性婚が合法化しているような国では、ハラスメントやコミュニケーションに対する尺度も違う。会社で取り組んでいることも、すべての国や地域で同じように足並みを揃えて推進できるわけでもない。

 「ダイバーシティの課題は、現地の歴史、文化、慣習、宗教、法制度などと非常に密接に絡んでいて、国ごとにかなり状況が違います。ですから、会社としてこれをやってくださいと言えばできるというものではありません。その国や地域の課題が何なのかということを、理解するところから始めないといけないので、そういった面では、まだまだというところです。今後力を入れていかなければ、と思っています」(内田氏)

ファーストリテイリング社長室ダイバーシティ推進チームリーダーの内田 絢子 氏
ファーストリテイリング社長室ダイバーシティ推進チームリーダーの内田 絢子 氏

 「柳井社長からは、ダイバーシティ推進チームに対して、会社の成長をドライブしていく多様なビジネスリーダーを多く生み出していってほしいということを強く求められています。最終的には、そういったビジネスリーダーによってイノベーションを生み出し、様々なお客様のニーズに応えていくことが目標です」(内田氏)

 企業がD&Iに取り組む一番の目的は、グローバルで優秀な人材を確保し、働き続けてもらうためだ。人材獲得競争がますます激化する中、多様性を尊重する文化があり、実際に多様な人材が生き生きと活躍している会社でなければ、競争力はない。現在の取り組みが、何年か後には大きな差となって表れるのかもしれない。

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記事執筆者

北沢 みさ / MK Commerce&Communication代表

東京都出身、日本橋在住。早稲田大学第一文学部卒業。
メーカーのマーケティング担当、TV局のプロデューサーの経験を経て、
1999年大手SPA企業に入社しマーケティング・PRを12年、EC・WEBマーケティングを8年担当し、ブランドの急成長に寄与。
2018年に独立後は、30年に渡る実務経験を活かし、小売・アパレル業界を中心に複数企業のアドバイザーとして、マーケティングおよびEC業務を支援中。

 

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