負けない商品のつくり方 「もうやんカレー」に学ぶ、“つぶれない店”をつくるポイント

2021/12/06 05:55
    吉田典史
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    ― カレーソースの秘訣は?

    辻 創業時から、カレーソースには徹底して力を入れてきました。YouTubeでカレーソースを作っているところを映した動画をアップロードしていますが、大事な部分は撮影していません。都内にいくつかある「秘密工場」で私が基本的には一人で作り、それを各店舗に車で運び、カレーライスにしています。

     カレーソースは大量の野菜や果物を70時間以上炒め、煮込み続けます。25種類以上のオリジナルのスパイスを使い、約2週間の熟成期間を経て完成します。この作業には膨大な時間やエネルギーが必要で、ほとんどの店の経営者や料理人はこんなことはまずしない、採算が合いません。しかし、他がしないからこそ、私たちはするのです。これだけの野菜と果物を限られた時間やコストで集めるのも、たぶん難しいでしょうね。

     現在に至るまで、いろいろな食品メーカーなどから「一緒にもうやんカレー(のレトルトカレー)を作り、販売したい」と誘われました。しかし、大量の野菜や果物を煮込んで、70時間以上かけてカレーソースを作っているのを知ると諦めてしまわれるケースが多いのです。

    ― なぜ、野菜や果物に目をつけたのですか?

    辻 両親が自然食品の店を都内で経営していて、子どもの頃から野菜や果物をたくさん食べてきました。会社員だった頃、会社の寮でカレーを作ることになった時です。みんなにも健康になってもらいたいから、野菜や果物を大量に入れ、時間をかけて丁寧に煮込んだカレーを作りました。食べてくれた人の多くが「とてもおいしい」と言ってくれ、店を始めてもある程度はお客さんが来てくれるのかな、と感じました。少なくとも、挑戦する意味はあると思うようになったのです

     飲食店の経営にリスクがあるのは、もちろん心得ていました。3000万円前後を金融機関から借り入れスタートしたのですが、毎月40~50万円のペースで返済を続けないと経営が成り立たない。例えば60万円の利益で、50万円が返済で消えると、残り10万円。これで家族を養うのは難しいですよね。だから事業や返済の計画は念入りに考えました。
    計画で最も大切なのは、「お客さんを優先して考える」こと。そして、もうやんカレーにしか作れない味にすること。他のお店と違わないといけない。創業期には、ここまで大量の野菜や果物を煮込んでいるカレーのお店は全国でも数件しかなかったこともあって、開店して早いうちから、お昼は大勢のお客さんが来てくれました(後編に続く)。

    もうやんカレー  辻智太郎社長
    もうやんカレー 辻智太郎社長
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