東名阪に香港、NY、パリ…コロナで疲弊のアパレル業界、なぜTOKYO BASEは積極出店ができるのか?

2021/08/18 05:55
    野澤正毅
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    日本ブランドは中国の富裕層に大人気

     同社のもう一つの大きな特徴が、海外での事業展開の強化だ。「日本発を世界へ」を旗印に、海外でもラインアップは100%日本製とし、独自性を打ち出す。そうした日系のセレクトショップは、「当社だけと言ってもいいでしょう」と、中水氏は胸を張る。

     20212月末には、13店舗の海外店舗を展開。そのうち、10店舗を中国、3店舗を香港に出店している。中国本土でも、出店エリアは、北京、武漢、成都といった大都市圏限定だ。それにしても、なぜ中国圏に集中出店しているのか。

     「経済成長著しく、巨大な人口を抱える中国は、すでに1億人の富裕層がいるともいわれています。中国人にとって日本は先進国であり、日本ブランドも欧米ブランドと同じように評価されます。中国の富裕層は、目が肥えていて、ファッション感度も高まっているんですね。日本ブランドは、内外価格差があって、日本よりもプライスラインがかなり高いのですが、それでも欧米ブランドより割安。しかも、中国人の体型に合っているので、人気が急上昇しているんです」(同)。

     興味深いのは、中国では「ヨウジヤマモト」といった別ブランドの店舗も運営している点。同社が商品を仕入れ、同社のスタッフが販売するのはセレクト業態と同じだが、ワンブランドのみの取扱いなので、外見は“オンリーショップ”なのだ。

     「中国の代理店を通すよりも、当社に現地での販売を任せたいという日本の百貨店さんやメーカーさんが、実は、相当多いんですね。当社にとっても、リスクはあるのもの、利益を総取りできるし、海外店舗運営のノウハウがたまるといったメリットも大きいんです」(同)。

    中国圏の売上高は、2020年には約7億円だったのが、2021年には約30億円と急増。「香港問題といったカントリー・リスクはあるものの、今後も成長市場と見ています」と中水氏。20221月期にも、中国本土では深圳、北京、上海、広州など9店舗の新規出店を計画中で、中国事業はさらに大幅に拡大する見込みだ。

     それだけではない。米国のニューヨークやロサンゼルス、英国のロンドン、フランスのパリ、イタリアのミラノといった欧米のファッション中心地への進出も、虎視眈々と狙っている。「欧米市場の足がかりとして、まずは2年後をメドにニューヨーク、パリへの出店を目指します」。一方で、日本ブランドが馴染みやすいアジアでも、シンガポールなどの富裕層の多い大都市圏には、進出する可能性が高いという。

     売上高1000億円を掲げる同社の中期計画では、海外事業規模を400億円以上としている。メード・イン・ジャパンのファッションを武器に、グローバル市場に打って出る“若きサムライ”の活躍ぶりに、今後も目が離せない。

    管理本部長
    中水英紀取締役CFO管理本部長
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